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肝がん

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1 病気について(概要、疫学的なものも含めて)

 

 肝癌は肝臓から発生した「原発性肝癌」と、肝臓以外の臓器にできた癌が肝臓に転移した「転移性肝癌」に分類されます。一般的に肝癌とは「原発性肝癌」のことを指し、その中には肝細胞に由来する「肝細胞癌」と、胆管細胞に由来する「胆管細胞癌(肝内胆管癌)」が含まれます(これら以外の癌は極めて稀です)。肝細胞癌と胆管細胞癌は性質や治療法が異なることから区別され、原発性肝癌の大部分(90%以上)を肝細胞癌が占めます。

肝細胞癌は慢性肝炎や肝硬変を背景に発生することがほとんどで、その原因としてはこれまで、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスによるウイルス性肝炎が大部分を占めていました。しかし近年、B型肝炎は抗ウイルス薬の進歩によりB型肝炎ウイルスの制御が可能となっており、また出産時の母子感染予防法によりB型肝炎ウイルスの新規感染者を減らすことに成功しています。C型肝炎は抗ウイルス薬の開発が相次ぎ、インターフェロンを使用しない経口薬だけの治療が主流となりました。大きな副作用なく治療でき、90%以上の確率でC型肝炎ウイルスを排除することが可能となったことで、C型肝炎ウイルス感染者は急速に減少しています。他に喫煙やアルコールの多量摂取も原因となります。B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス感染者数の減少に伴い、わが国の肝細胞癌の患者数は減少傾向ですが、昨今の肥満や糖尿病など患者数の増加に伴いアルコール摂取によらない脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患:NAFLD)からの肝細胞癌の割合が増加傾向にあります。

 厚生労働省の統計では肝癌による死亡者数は2005年をピークに減少に転じており、臓器別癌死亡者数は男性では第4位、女性では第6位となっています。年齢別にみた肝細胞癌の罹患率(病気にかかる割合)は、男性では45歳、女性では55歳から増加します。罹患率、死亡率はともに男性で女性の約3倍高率となります。

2 診断について

 

 肝臓は「沈黙の臓器」と呼ばれるように、癌があっても初期には自覚症状がほとんどありません。肝細胞癌を疑う特有の症状はなく、健康診断で肝機能障害を指摘された方が、医療機関での精密検査で肝硬変や肝細胞癌を指摘される場合も少なくありません。一方で、他の病気で検査を受けた際に偶然、肝細胞癌が発見されることもあります。血液検査では肝機能障害(慢性肝炎)の評価や肝炎ウイルス持続感染の有無、腫瘍マーカーの測定が可能です。代表的な肝細胞癌の腫瘍マーカーにはAFPPIVKA-Ⅱがあり、診断の補助となります。肝細胞癌があっても腫瘍マーカーが上昇しない場合もあり、その測定のみでは肝細胞癌を診断することは困難で、診断には画像検査が不可欠です。最も簡便な検査は腹部超音波(エコー)検査で、負担が少ないことが利点ですが、肝癌の部位によっては見えにくいことが欠点です。肝腫瘍をより明瞭に描出し、腫瘍の性質を鑑別するために、エコー用の造影剤を用いて検査を行うことがあります。最も信頼性が高い検査には造影剤を用いたCT検査、MRI検査があります。腫瘍の有無のみならず、腫瘍の個数や広がり、血管との位置関係など正確な診断が可能となり、治療方針の決定に役立ちます。CTMRIの画像データをコンピュータで処理し、超音波検査で描出されているのと同じ画像を作成して、超音波画像と比較するヒュージョンイメージングで、腫瘍の位置を正確に確認することもあります。その他の検査として血管造影検査があり、足の付け根の動脈からカテーテルを挿入し、肝臓の動脈から造影剤を注入することで診断や、そのまま治療まで行うことができます。画像検査のみで診断が困難な場合には、腫瘍生検による病理組織診断を行うことがあります。血管造影検査や腫瘍生検は入院が必要となります。当院ではこれらの検査結果を総合的に判断し、早期かつ正確な診断に努めています。

 肝細胞癌の病期分類には国際対がん連合(UICC)分類や日本肝癌研究会の分類があります。UICC分類も日本肝癌研究会分類も、基本は肝内病変の大きさや個数、脈管侵襲の有無(T因子)、リンパ節転移の有無(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)から構成されます。より初期の病期で診断することにより、根治治療を含め選択肢の幅が広がるため、リスクがある方では画像検査を含め定期的に検査を受けていただく必要があります。

3 治療について


  肝癌の治療法としては、1)外科的手術療法、2)エタノール注入療法やラジオ波焼灼療法など経皮的局所療法、3)肝動脈化学塞栓療法、4)化学療法、5)放射線療法などがあります。これらの治療の中から肝癌の大きさや個数、位置、肝機能に応じて最も適した治療法を選択して行います。肝細胞がんの患者さんの多くは、がんと慢性肝疾患という2つの病気を抱えているため、がんの病期(ステージ)だけでなく、肝臓の障害の程度(肝硬変の程度を把握するために用いられるChild-Pugh分類による肝障害度)や、肝予備能(肝臓の機能がどのくらい保たれているか)も考慮して治療方法を選択します。そのために、外科、内科、放射線科、病理部の連携が最も重要であり、当院では定期的に各科の医師が集まってカンファレンスを行い、病状に合わせた治療法を決定するようにしています。各治療に関しては以下の通りです。

 

1)手術療法

 外科的治療

 肝切除、すなわちがんとその周囲の肝臓の組織を手術によって取り除く治療です。色々な治療法の中で最も治療成績が良く(根治性が高い:治る可能性が高い)、長期生存が期待できる治療法です。

肝切除は、肝臓がんの個数が少数個(通常、がんが肝臓にとどまっており、3個以下)の場合に考慮されます。がんの大きさには特に制限はなく、10cmを超えるような大きながんであっても、切除が可能な場合もあります。

  ※肝臓がんの患者さんのうち、次の条件を満たす場合に外科切除の適応となります。

   ・肝予備能が良い(腹水がある患者さんなどは、肝切除後に肝臓が機能しなくなる(肝不全)危険性が高く、

    手術ができないことがあります)。

   ・遠隔転移(肺や骨、リンパ節など遠くの臓器への転移)がない。

   ・がんが重要な脈管(肝動脈や門脈、肝静脈、胆管など)に浸潤していない(日本のガイドラインでは、

    条件によっては切除可能となっています)。

   ・全身麻酔や手術に耐えられるだけの全身機能が保たれている(心臓や肺の機能が悪い患者さんでは

    手術ができないことがあります)。

 肝細胞がんの患者さんは、慢性肝炎や肝硬変などによる肝機能障害を伴っていることが多いため、肝切除を考慮する際には必ず肝予備能検査を行い、肝障害度や肝予備能を評価します。肝切除を考慮/施行できるのは、Child-Pugh分類がAまたはBの場合です。通常、肝予備能が良い場合は肝臓の約2/3まで切除可能とされていますが、悪い場合は部分切除などの小さい切除しかできない場合があります。大量肝切除(肝臓を半分以上切除する)を考慮する必要がある場合には、肝予備能とともに切除後にどれだけ肝臓の量を残せるかを術前に評価し、手術可能かどうかを判断します。

 肝臓は解剖学的(肝臓の中の脈管の走向に基づいて)に4つの区域(細かく分類すると8つの亜区域)に分かれています。肝切除の術式は区域に沿って切除するか、しないか、で2つに分類されます。

 ‣ 非系統的切除

    肝部分切除がこれに当たります。がんから一定の距離をとって、区域に関係なく肝切除を行います。

    切除範囲が少ないことが多く、肝硬変を伴う場合(肝機能が悪い場合)や転移性肝がんなどで主に

    行われます。複数個のがんの場合には何カ所も切除することもあります。

‣ 系統的切除

    切除区域を栄養する流入血管を遮断し、区域の境界に沿って肝切除を行います。

    肝葉切除や肝区域切除、肝亜区域切除など、切除する(亜)区域によって、実際の術式は様々です。

    肝細胞がんは、腫瘍が存在する区域に微小転移が稀にあるため、肝機能が良い場合は基本的に

    系統的切除が行われます。切除範囲に胆のうが含まれる場合は、胆のうも同時に切除します。

    がんの数、大きさ、部位によって、また肝機能を考慮して、個々の患者さんに適した術式を選択、

    根治的かつ安全に切除できる範囲を考慮しなければなりません。

  手術の合併症・後遺症について

    肝臓の切除面から、胆管内を流れる胆汁が漏れる胆汁漏(たんじゅうろう)や出血、肝不全などが起こる

   ことがあります。胆汁漏は、通常ドレーン(パイプのようなもの)をつけたまま/入れ替えをすることで

   症状が改善していきますが、まれに再手術で治療が必要なこともあります。出血は輸血あるいは再手術に

   よる止血が必要な場合があります。肝不全は肝臓がまったく機能しない状態のことで、前述した通り肝切除を

   考慮する時点で肝臓の機能に応じて十分な肝臓の量を残すようにしていますが、ごくまれに重篤な合併症で

   ある肝不全が起こることがあります。

  

 ②鏡視下治療(ロボット支援下を含む)

 腹腔鏡手術は傷が小さく、術後の痛みが少なく術後の回復が早い、入院期間が短いといった利点があります。一方で、手術可能ながんの場所に制限があり、開腹手術に比べると手術時間がかかることもあります。また、直視下ではないので観察が十分でない場合もあります。

開腹手術同様、がんの数、大きさ、部位、また肝機能を考慮し、さらに上記の利点・欠点を踏まえた上で、根治性はもちろん、安全に、確実に行えると判断した場合、患者さんのご希望もあわせて腹腔鏡下手術の適応を検討します。

なお、当院での肝臓がんに対するロボット支援下手術は該当なし。  

 

2)内科的治療

 内科的治療の適応となるのは、①肝硬変などで肝機能が低下していて安全に肝切除術が行えない場合、②肝癌の大きさが巨大であったり、個数が多数であったり、肝外に遠隔転移を伴うなど癌が高度に進行している場合、③患者様が手術を希望されない場合などです。内科的治療は①局所的治療(エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法)、②経肝動脈的薬物療法、③分子標的薬、全身化学療法に大別されます。

  ①局所的治療(エタノール注入療法、ラジオ波焼灼療法)

   エタノール注入療法は超音波ガイド下(エコーで視認しつつ)に、エタノール注入用の細径針を腫瘍に

  穿刺し、高純度のエタノールを直接注入します。高純度エタノールを腫瘍内で拡散させることで、腫瘍細胞を

  壊死させる治療法です。肝細胞癌に対して優れた治療効果を発揮しますが、胆管細胞癌や転移性肝癌は対象とは

  なりません。癌の部分を選択的に治療するため、ある程度肝機能が低下していても行うことは可能ですが、

  腹水がある場合には適応となりません。1回のエタノール注入量や治療回数は、腫瘍の大きさによって異なり

  ます。サイズが大きい場合には十分な壊死効果が得られないため、一般的には3cm以下の腫瘍が適応となりま

  す。また個数が3個以内の場合に、エタノール注入療法が適応となります。

   ラジオ波焼灼療法も超音波ガイド下に、ラジオ波焼灼用の細径針を腫瘍に穿刺して行います。穿刺針の

  先端からラジオ波を流すことで、穿刺針の先端部分から径3cmほどの範囲に熱を発生させ、約10分間の焼灼で

  最終的に約100℃近くまで上昇させ、腫瘍を壊死させます。エタノール注入療法よりも腫瘍壊死作用が強く、

  局所制御効果に優れています。治療は主に肝細胞癌が対象で、適応となる腫瘍のサイズや個数はエタノール注入

  療法と同様で3cm以内、3個以下となります。

  ②経肝動脈的薬物療法(肝動脈化学塞栓療法、肝動注化学療法、持続肝動注化学療法)

   肝臓は門脈という血管から主に栄養されているのに対して、肝細胞癌は主に肝動脈から栄養されることを

  利用した治療法です。足の付け根からカテーテルを肝動脈まで挿入する血管造影検査により、肝癌に薬剤を

  注入する治療法です。肝動脈化学塞栓療法は、リピオドールという油脂性造影剤と抗癌剤を混ぜたものを腫瘍に

  選択的に注入し、追加で癌細胞を兵糧攻めにするために塞栓物質で腫瘍への血流を遮断する治療です。場合に

  よっては局所療法との併用で治療を行うことがあります。非癌部への影響が比較的少ないため、肝機能がある

  程度低下していても治療が可能ですが、腹水やひどい黄疸がある場合には治療ができません。また腫瘍の個数が

  多い場合など、特定の部位のみでは治療が困難な場合には、肝臓全体に抗癌剤を注入する肝動注化学療法を

  行います。持続肝動注化学療法は、癌部につながる肝動脈にカテーテルを留置したままにした状態で、皮下に

  ポートという薬剤の注入するための器具を埋め込み、持続的に5-FU(フルオロウラシル)やシスプラチンなどの

  抗癌剤を注入する方法です。効果が持続する限り繰り返して治療を継続します。


  ③分子標的薬、全身化学療法

   肝細胞癌は他の臓器の癌よりも抗癌剤が効きにくいため、静脈からの全身投与ではなく肝動脈から選択的に

  高濃度の抗癌剤を注入する方法が主流です。近年は治療薬の進歩により、分子標的薬といってこれまでの

  殺細胞性の抗癌剤とはことなる機序で抗腫瘍効果を発揮する薬剤が肝細胞癌でも使用できるようになりました。

  現在、ソラフェニブ、レゴラフェニブ、レンバチニブ、ラムシルマブの4種類の分子標的薬が肝細胞癌で使用

  可能であり、これらの薬剤は癌細胞の増殖や、癌への血管新生を阻害することで抗腫瘍効果を発揮し、

  肝細胞癌患者さんの生命予後を有意に延長させることが国際的に実証されています。外科的切除不能な

  胆管細胞癌(肝内胆管癌)に対しては、ジェムシタビン、シスプラチン、TS-1(ティエスーワン)といった

  抗癌剤を用いて全身化学療法を行います。 

3)放射線療法

 ①根治的放射線治療

   切除可能な肝がんは手術療法が第一選択となりますが、切除が難しい場合、高齢や合併症がある場合、

  又手術を希望されない場合などに根治的放射線治療を行います。特に門脈と呼ばれる血管に進展した肝がんに

  対して有効性が高いです。当院では、消化管や正常な肝臓などの周囲臓器に照射される放射線の線量を

  低減する高精度な照射手法である強度変調回転放射線治療 (VMAT)を用います。消化管の潰瘍や肝機能の

  低下などの副作用の発症率の改善が期待できます。さらに当院では、放射線治療の治療効果を高める目的で

  温熱療法(後述)の併用が可能です。


 ②少数個の再発・転移に対する救済的放射線治療

   肝臓内や腹部リンパ節の再発、あるいは少数個(13個程度)の遠隔転移を生じた場合に、薬物療法に加え

  救済的な放射線治療を選択することが可能です。遠隔転移は、肺転移、骨転移、また鎖骨上・縦隔・骨盤などの

  リンパ節転移などが対象となります。治療した腫瘍の高い制御効果が期待できます。特に3cm以下の肝臓の

  再発病変や肺転移に対しては、定位放射線治療(ピンポイント照射)が選択可能で、腫瘍のより高い制御が

  期待できます。

 ③緩和的放射線治療

   他の臓器へ多数個の転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。肝がんに伴う

  黄疸や肝機能低下、また骨転移に伴う疼痛や神経症状の緩和に有効性が高いです。緩和的放射線治療に必要と

  なる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。治療期間は3週間以内が多く、状況に応じて1回のみ

  の治療も選択可能です。


 ④脳転移に対する放射線治療

   脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた

  定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御

  効果が期待できます


 ⑤温熱療法 (ハイパーサーミア)

   当院では、肝がんに対して放射線治療や抗がん剤の治療効果を高める温熱療法を取り入れています。

  がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパットで挟み込み高周波電流を流して加温します。パッ ト内の

  液体を還流させ、皮膚表面の熱感や痛みを抑えます。1回の加温時間は4060分程度で、週に1~2回、

  放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。

 セカンドオピニオンの受け入れ    

  ( 可 )

   当院ではセカンドピニオンを希望される患者様の御相談について、いつでもお待ちしております。

 患者さんにメッセージ

 

 近年、ウイルス性肝炎の制御が可能となりましたが、肥満や糖尿病などの生活習慣病に罹っている患者様では肝細胞癌の発症リスクが高いことが問題となっており、早期発見が治療の選択に重要なため、放射線部、生理機能検査室と連携し適切な診断に努めております。当院では今後も肝細胞癌、胆管細胞癌(肝内胆管癌)の患者様に、安心して治療を受けて頂くための設備、環境の整備行うとともに、外科治療、内科治療、放射線治療を組み合わせた集学的治療を実践して参ります。

産業医科大学 医学部 第三内科学  患者様へ

https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/3nai/homepage/m_kanjya.html


産業医科大学 医学部 第一外科学教室  患者の皆様へ 肝胆膵グループ

https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/1geka/m_group2.html