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開学記念日:4月28日

脳腫瘍

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1.病気について

 死亡原因の3大疾患は、がん(悪性新生物)・心疾患・脳卒中といわれています。死亡原因であるがんの中で、脳腫瘍は約1%であり、まれな病気です。脳腫瘍は、脳そのものから発生する腫瘍(原発性脳腫瘍)と、胃がんや大腸がんといったいわゆるがんが頭にうつった腫瘍(転移性脳腫瘍)に分けられます。原発性脳腫瘍の発生率は、人口10万人に対して年間14人程度といわれています。さらに、原発性脳腫瘍の種類は約150種類存在し、それぞれの脳腫瘍で、悪性や良性など全く性質が異なり、治療方法や余命も全く異なります。脳腫瘍は、頭の中にできる腫瘍ですが、脳や頭蓋骨さらには、目の奥や脳底部に存在しホルモンを産生する下垂体などあらゆる場所に発生します。そのため、脳腫瘍それぞれにおいて頭痛、手足の麻痺、言語障害、視力障害やホルモン異常といった様々な症状がみられます。同じ脳腫瘍でも発生する場所によって症状も経過も全く異なります。手術で可能な限り摘出が必要な脳腫瘍もあれば、化学療法(抗がん剤)や放射線治療がよく効く脳腫瘍もあります。現在、WHO(世界保健機構)の悪性度分類において、グレード1(良性)~4(悪性)で大まかに分けられていますが、たとえグレード1の良性脳腫瘍とはいっても、十何年も全く成長しない場合や、非常にゆっくり成長する場合もあり、発生する場所によっては非常に重篤な症状を示す場合があります。また、悪性転化といって、最初はグレード1の良性脳腫瘍であったとしても、数年かけてその性質が変わりグレード4の悪性脳腫瘍に変化する場合もあります。 

2.診断について

 まず、頭部MRI検査を行います(造影剤を使用することが多いです)。MRI検査を行うことで、どこに脳腫瘍があるのか、どれくらいの大きさなのかが分かります。この時点で、約150種類ぐらいある脳腫瘍の中から、おおよそ見当がつきます。重要なことは、頭部MRIでははっきりとした診断(確定診断)はつきません。確定診断をするためには、病変の一部を採取して、病理検査さらには遺伝子診断を行い、最終的に診断されます。すなわち、確定診断を得るためには、手術が必要となります。ただし、脳の手術はリスクを伴います。そのリスクを考えても、手術によって早く診断をして次の治療に移るほうが良い場合と、手術を避けて、まず頭部MRI検査で経過を観察しながら、脳腫瘍が増大してきた時点で手術による診断を行ったほうが良い場合もあります。したがって、どこの場所に、どのような大きさの腫瘍があり、頭部MRI検査でどういった脳腫瘍が考えられるかによって、手術を行って診断したほうがよいのかどうかを判断します。肺がんや乳がんなど、血液検査で診断する腫瘍マーカーという検査方法がありますが、残念ながら、脳腫瘍の場合にはあまり役立ちません。非常に発見しにくい小さながんを検出するPET検査がありますが、脳腫瘍は一般的には行われません。脳腫瘍の診断においては、頭部MRIが最も重要な検査となります。

3.治療について

 1)手術療法

 脳腫瘍の手術の方法として2つの方法(開頭腫瘍摘出術・定位的脳腫瘍生検術)があります。開頭腫瘍摘出術は、手術用顕微鏡を使用して頭部を開頭し、神経や血管と脳腫瘍を分けながら摘出していきます。安全に脳腫瘍を摘出するために、さまざまな手術支援システムが現在開発されています。脳腫瘍は目で見てわかる場合とそうでない場合があります。実際に脳のどの部位を操作しているのかリアルタイムに画像表示できるナビゲーションシステムや、境界不明瞭な脳腫瘍を光らせて摘出する方法(5-アミノレブリン酸蛍光ガイド下手術)といった方法も確立しています。さらには、手術中に脳や神経に直接電気刺激を行いながら脳腫瘍に囲まれた脳神経を探すことや、手足の動きを常に確認しながら行うシステム(電気生理モニタリング)などさまざまな技術が開発されています。現在の脳腫瘍の手術は、それら最新システムを最大限活用して、合併症を最小限におさえるように手術が行われます。定位的脳腫瘍生検術は、脳の深部に脳腫瘍が存在し、診断を目的としてごく一部だけ脳腫瘍を採取する場合に行われます。



 2)内視鏡的治療

 近年、脳神経外科領域においても神経内視鏡技術が発達しています。鼻の孔から神経内視鏡を挿入して、頭蓋底部(特に下垂体病変)に存在する脳腫瘍を摘出します。神経内視鏡の解像度は年々進化しており、鮮明な画像を確認しながら手術操作を進めることができます。鮮明な画像が得られることで、腫瘍と周囲にある正常構造物との境界を確実に確認し腫瘍を安全に摘出することが可能となります。さらに、頭蓋底部に大きく存在する脳腫瘍は、神経内視鏡と従来の顕微鏡手術を使用した開頭術と併用して脳腫瘍を摘出します。 

 3)局所的治療(経皮的治療、カテーテル治療など)

 カテーテル治療(血管内治療)で脳腫瘍そのものを治療することはありません。しかし、脳腫瘍の手術の難しさの一つとして手術中の脳出血にどのように対応するかが重要となります。特に、血流が多い脳腫瘍においては、摘出する前に、あらかじめ脳腫瘍を栄養する動脈(腫瘍血管)をカテーテル治療で動脈を詰めておく処置(腫瘍血管塞栓術)を行うことで、手術中に脳腫瘍からの出血量を減少させることが可能となり、より安全に摘出することができます。


 4)薬物療法

  ① 抗がん剤

   脳腫瘍においては、有効性が確認されている抗がん剤が限られています。テモゾロミドは、脳腫瘍の中でも

      最も悪性度の高い悪性神経膠腫に有効性が認められています。比較的副作用が少なく、内服で治療が可能と

  なります。また、カルムスチンという抗がん剤を含んだ錠剤を実際に開頭術で脳腫瘍を摘出した場所において、

  直接残存する脳腫瘍を治療する薬剤も開発されています(BCNUウエファー)。メトトレキサートは、点滴で

  行う抗がん剤ですが、脳腫瘍の中でも、悪性リンパ腫にその有用性が確認されています。


  ② 分子標的薬

   大腸がんなどで、使用されているベバシズマブは、腫瘍を栄養する血管を遮断させる分子標的薬として広く

  使用されています。脳腫瘍のなかでも悪性神経膠腫にその有用性が確認されており、使用する場合があります。


  ③ 腫瘍治療電場療法

   脳腫瘍の中でも初発の膠芽腫に対して有効性が確認されている新しい治療法です。頭部に

   電極(シール)を張り付け、脳全体に非常に弱い電流をかけることにより、腫瘍が大きくならない

   ように行う治療法です。

  

 5)放射線治療

 脳原発悪性腫瘍の場合、手術(あるいは組織生検)後に根治的な放射線治療を行います。多くの場合、治療効果

高める目的で薬物療法を併用します(化学放射線療法)。当院では最新の高精度な放射線照射法である強度変調回転

照射法(VMAT)を導入しています。より高い腫瘍への放射線集中性と、隣接する正常臓器への放射線線量の低減が

得られます。  

 下垂体腺腫、聴神経腫瘍、髄膜腫や頭蓋咽頭腫といった良性腫瘍の場合は手術が優先されますが、手術困難な部位

や手術後に遺残がある場合、また手術後の再発では放射線治療を行います。特に聴神経腫瘍では、強度変調回転照射

(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)により、高い腫瘍制御と聴力・顔面神経の機能温存が期待

できます。 

 セカンドオピニオンの受け入れ

  ( 可 ) 

 患者さんにメッセージ

  脳腫瘍といっても非常に種類が多く、治療法も異なります。また、同じ脳腫瘍であっても、大きさや部位などに

 より、どのような治療を選択すべきか、患者さんひとりひとりで異なります。どのように今の病気と向かい合うか

 を主治医の先生とよく相談することをおすすめします。




産業医科大学 医学部 脳神経外科  診療部門

https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/nogeka/homepage/sinryou.html