消化器内科

 

   産業医科大学若松病院消化器内科は、産業医科大学第3内科を母体として、消化器疾患、すなわち消化管(食道から大腸まで)疾患、肝臓疾患、胆道疾患、膵疾患を専門分野として診療を行っております。外来日は、月曜日から金曜日の午前・午後となっておりますが、火曜日から木曜日の午後は再診の方のみの診療となっておりますので、ご注意ください。

 

【消化器内科で対応している疾患】

 

 1 消化管疾患

   消化管とは食道から大腸に至るまでの管腔臓器で、主に食べたものを消化・吸収し、不要なものを便として排泄する働きを担っています。そこには色々な良性疾患や悪性疾患が発生します。当科では、内視鏡等の検査により、消化管疾患の的確な診断を行い、検査結果に基づいて最適の治療を行うことを心がけております。特に消化管に発生した腫瘍に対しては内視鏡を用いた侵襲の少ない治療を積極的に行っています。

 

 (1(1) 上部消化管疾患(食道、胃、十二指腸の病気)
 
上部消化管疾患では、胸のつかえ感、胸やけ、ゲップ、もたれ感、吐き気、嘔吐や鳩尾の痛み等、多種多様な胸やお腹の症状が出現してきます。症状や診察所見から診断が可能な場合もありますが、診断のために検査が必要となることも多くあります。

 検査の種類は、疑われる病気によって変わってきますが、上部消化管疾患が疑われる場合には、上部消化管内視鏡検査、いわゆる「胃カメラ」が必要となる場合があります。胃カメラは、緊急度や検査予約患者の状況にもよりますが、絶食で来院して頂ければその日に検査を行うこともできます。また、胃カメラには、口からカメラを挿入する経口内視鏡と鼻からカメラを挿入する経鼻内視鏡の2種類があり、当院ではいずれの方法でも検査を行うことができますし、ご希望の方には、検査に伴う苦痛が少なくなるよう鎮静剤を併用した検査も行っていますので、検査の際にご相談頂ければと思います。

 近年、胃癌で亡くなる方の数は減少傾向にありますが、それでもがんによる死因の第3位を占めております。比較的新しい治療方法として、転移の危険性のない早期の癌であれば経口内視鏡下に粘膜下層剥離術という切除方法で治療が行えるようになってきていますが、当院でも、同治療の適応となるような病変に対しては、積極的に治療に取り組んでいます。

 

 (2)(2)小腸疾患
 
小腸は比較的病気の発生が少ない部位ですが、多くの栄養素の消化・吸収を行う重要な臓器ですので、腹痛や下痢などの一般的な腹部症状以外に、栄養不良に基づく症状が出現することがあります。小腸の病気が疑われる場合、検査で診断を確定していくことが必要になります。小腸の検査方法としては、小腸内視鏡検査、カプセル内視鏡検査やバリウムを用いた小腸造影検査がありますが、当院には小腸内視鏡やカプセル内視鏡の器材が常備されていませんので、これらの検査が必要な場合には産業医科大病院 消化管内科に検査を依頼しています。

 

   (3)大腸疾患
 
近年大腸癌が増加してきていることが指摘されていますが、確定診断には内視鏡検査が必要となります。通常の大腸内視鏡検査の場合は、大腸内に溜まっている便をすべて出してしまって、腸を空っぽの状態にするための前処置が必要となります。このため、検査は予約制となりますが、月曜日から金曜日まで毎日検査を行っていますので、検査まで長くお待たせすることはないと思います。なお、緊急性のある場合には前処置を行わず、当日の検査を行います。

 検査の結果、内視鏡的治療が必要な大腸ポリープが見つかった場合、原則入院して頂き(2泊3日)、治療を行っております。

 大腸内視鏡検査時も鎮静剤や鎮痛剤を併用して検査を行うことも可能ですので、ご希望の方は申し出て頂ければと思います。

 

 

   2 肝疾患

腹  肝臓は、腸から吸収された栄養素を体に必要な形に作り替えたり、栄養素を蓄積したり、また不要なものを分解し、体外に排出したりといった色々な働きを持った臓器で、生体内の化学工場とも言われています。そして肝臓は余力が大きいため、多少障害を受けても初期にはほとんど症状がなく、沈黙の臓器とも言われています。このため肝臓に異常が生じた場合は血液検査で初めて明らかになる場合が多くみられます。

 肝臓に異常が見つかった場合、原因によって治療方法も変わってきますので、まず原因を特定することが必要となります。そして、肝臓の状態を評価することも必要になりますが、このためには一般的に血液検査、腹部超音波検査、CT検査、MRI検査等の画像検査、また肝生検による組織学的検査等が行われます。

当科でも、これらの検査により、的確な診断を下し、また肝臓の状態を把握し、それに基づいた最適な治療を行うよう努めています。

 当院は、福岡県肝疾患専門医療機関として指定された若松区で唯一の医療機関となっていますので、肝臓の病気に関して心配事があれば気軽に相談に来て頂ければと思います。


 (1) (1) ウイルス性肝炎
 
B型肝炎やC型肝炎といったウイルス性肝炎に対する治療は、昔とは大きく様変わりしており、現在は内服薬による治療が主となっています。B型肝炎に対しては核酸アナログ製剤というウイルスの増殖を抑える内服薬を用いて肝炎をコントロールする治療が行われており、C型肝炎に対しては直接作用型抗ウイルス剤という内服薬でウイルスを排除して肝炎を治す治療が行われています。いずれの治療も副作用は少なく、治療効果は高いもので、当科でもこれらの治療に積極的に取り組んでいます。

 

 (2) (2)肝臓癌(肝細胞癌)

   肝がんは、ウイルス性肝炎が治るようになったこともあり、年々減ってきていますが、近年は非アルコール性脂肪肝炎からの発癌が増えてきています。肝がんでは腫瘍がかなり大きくなっても自覚症状はないことが多いため、肝臓の病気のある方は定期的に検査を受けることが必要です。検査は、血液検査で腫瘍マーカーを調べること、画像検査では腹部超音波検査を中心に、必要に応じて造影CT検査、造影MRI検査、造影超音波検査、また超音波ガイド下肝腫瘍生検による組織学的検査が行われます。当院でもこれらの検査を行い、早期肝癌の発見に努めています。治療に関しては、当院ではラジオ波焼灼療法等の超音波ガイド下の経皮的治療や抗癌剤等を用いた薬物治療を行っていますが、血管造影の設備はありませんので、血管造影下の治療はできません。血管造影下の治療が必要な場合には産業医科大学病院 肝胆膵内科に依頼しております。



   3 胆道疾患

      胆道は肝臓で作られた胆汁を十二指腸まで運ぶための通路になりますが、胆道に異常が起こると、腹痛(特に右上腹部の痛み)、発熱、黄疸(皮膚や白目が黄色くなる)等が出現します。しかし、これらの症状が胆道疾患によるものかどうかは、血液検査、尿検査以外に腹部超音波検査、CT検査、MRI検査など、他の消化器疾患でもよく行われる検査で明らかにする必要があります。

  当院でも種々の必要な検査行い、その結果を基に診断を下し、患者さん状態を加味して、相談しながら最適の治療を行うように努めています。

1)胆管結石

  上記検査にて胆管内に結石を確認した場合、原則として内視鏡下に結石を取り除く処置を行います。処置の際には、結石のサイズにもよりますが、内視鏡的十二指腸乳頭切開術あるいはバルーン拡張術を行ってから結石を取り除きます。

胆管炎を併発している場合には、内視鏡的胆道ドレナージ術を行い、炎症が落ち着いた所で内視鏡的結石除去を行う場合もあります。

 

(2)胆道癌

  手術での治療が難しい場合に、抗癌剤による治療を行っています。その際には腫瘍の広がりだけではなく、患者さんの状態を考慮して、最も適切な薬の組み合わせで治療を行いますが、免疫チェックポイント阻害薬を用いた最新の治療も行っています。

癌によって胆管が詰まり、閉塞性黄疸を起こしている場合には、患者さんの生活の質を損ねないように内視鏡で胆管にチューブ等を挿入する内視鏡的胆管ステント留置術を行っております。内視鏡的な処置が難しい場合、超音波検査でみながら体表から肝内の胆管を穿刺し、チューブを挿入する経皮経肝胆管ドレナージ術も行っています。



   4 膵疾患

    膵臓は蛋白質等を分解する消化酵素を作り出す外分泌腺とインスリン等を分泌する内分泌腺がありますが、膵臓が障害を受けると、腹痛、背部痛、黄疸、消化吸収不良などの症状が出現します。しかし、無症状のことも多く、他の消化器疾患と同様に、血液検査や画像検査などを行って、確定診断を付けることが必要となります。

  疾患によっては当院のみでは対応困難な場合があり、その際には大学病院肝胆膵内科と協議して最適、最善の治療が行えるようにしています。

(1)急性膵炎

 症状や血液検査、CT等の画像検査結果から急性膵炎と診断された場合、重症度を判定し、治療方法を決めていくことになりますが、原則として入院治療が必要となります。重症急性膵炎では、集中治療室で濃厚な治療を要する場合もあり、そのような状態に陥った方は大学病院に治療を依頼することがあります。

 

(2)膵癌

膵癌等の腫瘍が疑われ場合、確定診断に超音波内視鏡を用いた生検が必要になることがありますが、当院には超音波内視鏡の設備がありませんので、検査は大学病院に依頼しております。検査結果等から手術が不適となった場合は、ご本人と相談しながら、その時点で最も効果が期待できる治療方法を選択し、治療を行っております。

 

以上の如く、消化器疾患の大部分は当科で診断、治療が可能ですが、当科で対応困難な場合には産業医科大学病院 消化管内科・肝胆膵内科と共同して最適で最善の治療を提供できるように努めております。些細なことでも結構ですので、ますはご相談頂ければと思います。


 消化器内科スタッフ