臨床工学部
近年の目覚ましい医療技術の進歩により、診断・治療に用いられる医療機器は、より高度で複雑化している現状にあります。そこで、1988年(昭和63年)、医療機器の専門家として“臨床工学技士”という医療系国家資格が誕生しました。医療スタッフからは、ME(Medical
Engineer)やCE(Clinical
Engineer)と呼ばれています。
法律において、臨床工学技士は「医師の指示の下に、生命維持管理装置の操作及び保守点検を行うことを業とする者」と定められており、呼吸・循環・代謝を代行する人工呼吸器や人工心肺装置、血液浄化装置の操作、保守管理を行うことを一般的な業務としています。
しかし近年では、医療機器の安全な運用を確保するため、様々な分野で臨床工学技士の需要が高まっており、当院でも各部署に存在する様々な医療機器の操作・保守管理を行っています。
臨床工学部には、現在3名の臨床工学技士が所属しており、機器管理業務と臨床技術支援業務を主軸に業務を行っています。
1 機器管理業務
当院では、外来や病棟で使用される多くの医療機器を臨床工学部で一元管理しています。各部署で使用する際は医療機器管理システムに貸出登録を行い、一患者に一度使用するたび返却登録を行い、精度測定・アラーム動作確認等の点検や、修理を行っています。
2 臨床技術支援業務
(1) 手術支援
手術室では、電気メスや超音波手術装置、内視鏡手術装置など、様々な手術用治療機器が存在するため、これらの術前セッティングや術中トラブル対応、手術映像編集などを行っています。
また、観血的動脈圧測定ライン(A-line)の作成や、麻酔器や生体情報モニタ、血液ガス測定装置の管理・トラブル対応も行っています。
(2)
病棟ラウンド
病棟における医療機器の使用・保管状況の把握やトラブル対応のため、臨床工学技士が毎日病棟と外来をラウンドしています。
(3) 睡眠専門外来におけるCPAP管理
当院耳鼻咽喉科(http://wakamatsu-jibika.jimdo.com/)では、2014年10月より睡眠呼吸障害専門外来を開始しており、閉塞性の睡眠時無呼吸症候群の患者様に対し、CPAP装置の貸出しを行っています。
このCPAP装置の導入時の患者説明やマスクフィッティング、毎月の受診時の睡眠データ出力、設定変更などのCPAP装置の管理を臨床工学技士が行っています。
(4)血液浄化業務
体内に貯まった老廃物などを排泄あるいは代謝する機能が働かなくなった場合に行う治療で、血液透析療法、血漿交換療法、血液吸着法など様々な血液浄化療法が存在します。当院では、月・水・金曜日の週三回に血液透析療法を行っており、医師、看護師と共に安全な治療ができるよう努めています。
また、体内に溜まった腹水を一度取り出したのち、体に必要な成分を濃縮し再度体内へと返す腹水濾過濃縮再静注療法(CART)といった治療も行っています。
(5) 新人看護師の教育、ME安全セミナー、医療機器取扱研修
毎年春から夏にかけて、新人看護師に対し、病棟で使用する医療機器に関して講習を行っています。また、看護師をはじめとした医療スタッフに向けて、医療機器の安全使用に関するセミナーを、臨床工学部主催で定期的に行っています。加えて各部署からの依頼により、特定の医療機器に関する原理・取扱い等の研修も、随時行っています。
(6) その他、医療機器安全管理責任者としての業務
臨床工学技士は医療機器安全管理責任者も兼任しており、医療安全管理部として院内のラウンドなどを定期的に行い、医療安全上の問題点の早期発見に努めています。また週に一回、医療安全カンファレンスを行うことで、職種を超えた情報の共有を図っています。