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開学記念日:4月28日

皮膚がん

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1 病気について(概要、疫学的なものも含めて)

皮膚には色々な種類のがんができます。多くの皮膚がんは直接見たり触ったりすることができるため、患者さん自身が気付いて受診されることが多く、早期発見が可能な腫瘍であるといえます。皮膚科領域で扱う主な皮膚がんには以下のようなものがあります。

基底細胞癌(きていさいぼうがん)

皮膚がんの中で最も発生が多いがんです。高齢者のまぶたや鼻など顔面にできることが多く、いわゆる「ほくろ」に似ています。転移はまれですが、大きくなると表面から出血したり、周りの正常組織を破壊しながら進行することがあります。

有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)

 基底細胞癌の次に発生の多い皮膚がんです。紫外線や熱傷瘢痕(やけどのあと)が関係することがあります。イボ状あるいは治りにくい傷(潰瘍/かいよう)のようなできもので、大きくなると悪臭を伴ってくることがあります。

悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)

 メラノーマと呼ばれる皮膚がんです。多くは黒色調のできもので、足の裏にできることが多いです。形がいびつである、色調にムラがある、大きさがやや大きい、表面が盛り上がっているといった所見がある場合は注意が必要です。進行すると全身に転移する可能性があり、早期に発見して適切に治療を行うことが重要です。

乳房外パジェット病

 パジェット細胞というがん細胞が増殖する腫瘍です。乳房にできた場合は乳がんと同じように扱います。皮膚科領域では乳房以外の皮膚にできるパジェット病(乳房外パジェット病)を扱います。赤く湿ったような病変で、見た目はたむしや湿疹に似ていますが、薬を塗ってもよくならずに少しずつ広がっていきます。主にわきの下、へその周り、外陰部に発生します。

血管肉腫(けっかんにくしゅ)

 高齢者の頭部に生じる悪性腫瘍です。紫色の出血斑や黒いかさぶたのようなできもので、「治りにくい傷」として見つかることが多いです。放射線療法や化学療法での治療を行います。

その他

 メルケル細胞がん、脂腺がん、皮膚の肉腫、悪性リンパ腫である菌状息肉症(きんじょうそくにくしょう)なども皮膚にできる悪性腫瘍であり、それぞれ診断から治療まで行っています。

2 診断について

 皮膚がんの診断はまず視診(よくみること)から始まります。それぞれの皮膚がんは特徴的な見た目をしているので、視診だけである程度の診断が可能です。視診に加え、さらに詳しく腫瘍を観察するためにダーモスコピー検査を行います。拡大鏡のような道具を使って腫瘍の構造や色の分布、血管の走行などを観察します。特に基底細胞癌や悪性黒色腫などで有用な検査です。

 皮膚がんの確定診断のために、多くの場合で皮膚生検査を行います。局所麻酔の注射をした後に、腫瘍の一部を数mm切り取ります。切り取った組織の病理検査を行うことで診断を確定し、治療方針を決定します。

 転移する可能性のある皮膚がん(悪性黒色腫、血管肉腫、比較的大きな有極細胞癌など)についてはCTPET-CTなどの画像検査を行い、全身転移の有無を確認します。

3 手術療法

  (1)外科的治療

 多くの皮膚がんは手術で取りきる外科的治療が基本となります。特に基底細胞癌や有棘細胞癌は手術で根治が可能な場合がほとんどです。外科的治療を行う場合、皮膚がんの種類や進行度によって切除する範囲と深さを決定します。皮膚がんを切除したあとの欠損部が小さい場合は傷を縫って閉じます(縫縮)。縫縮できない場所や大きさの場合は皮膚を移植する植皮術や、皮膚を移動させる皮弁などによる再建を行います。リンパ節転移がある場合は周囲のリンパ節をすべて切除するリンパ節郭清術という手術を行うことがあります。

  (2)鏡視下治療(ロボット支援下を含む)

     該当なし

 

 

4 内視鏡的治療

    該当なし

5 局所的治療

 有棘細胞癌の前癌病変である日光角化症は塗り薬での治療が可能です。初期の皮膚悪性リンパ腫に対しては紫外線療法で治療を行います。

6 薬物療法

  (1)抗がん剤

 皮膚がんの種類と進行度によって、抗がん剤での治療を行います。

悪性黒色腫

これまでダカルバジンという抗がん剤を中心とした化学療法が行われてきましたが、最近になって免疫チェックポイント阻害薬と分子標的薬が使えるようになりました。悪性黒色腫の治療については後述します。

血管肉腫

放射線療法と化学療法を併用した治療を行います。パクリタキセル、ドセタキセル、エリブリンなどの薬剤を使用します。

有棘細胞癌

 進行した有棘細胞癌の場合、シスプラチン、アドリアシンなどの抗がん剤を使用することがあります。

  (2)分子標的薬

悪性黒色腫

 腫瘍細胞のBRAFという遺伝子に変異がある場合、分子標的薬での治療が可能です。このBRAF遺伝子変異は日本人の悪性黒色腫患者さんの約30%に認められます。2019年現在使用可能な分子標的薬としてダブラフェニブ/トラメチニブ、エンコラフェニブ/ビニメチニブ、ベムラフェニブがあります。

血管肉腫

 パゾパニブという分子標的薬が使用可能です。

  (3)免疫チェックポイント阻害薬

悪性黒色腫

 悪性黒色腫はもともと抗がん剤が効きにくい皮膚がんで、これまで使われてきたダカルバジンなどの抗がん剤治療では十分な効果が得られませんでした。最近になり免疫チェックポイント阻害薬での治療が可能となったことで、悪性黒色腫の治療成績は向上しています。2019年現在、悪性黒色腫に対して使用できる免疫チェックポイント阻害薬はニボルマブ、ペムブロリズマブ、イピリムマブがあります。悪性黒色腫の進行度やBRAF遺伝子変異の有無によって、免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬のどの薬剤を使用するか決定します。手術のあとの再発予防に使用することもあります。

メルケル細胞癌

 根治切除不能なメルケル細胞癌に対して、アベルマブという免疫チェックポイント阻害薬が使用可能となりました。

その他

切除した腫瘍について検査を行い、高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-high)を有するがんの場合はペムブロリズマブの投与が可能です。

  (4)ホルモン剤

     該当なし

  (5)その他

 皮膚悪性リンパ腫:進行度により、血液の悪性リンパ腫に準じた治療を行います。

7 放射線療法

(1)    根治的放射線治療

癌の発生部位や大きさ等の要因で手術が困難な場合や、手術により機能や整容性が損なわれる場合に根治的放射線治療が有効です。特に基底細胞癌や有棘細胞癌に対しては、根治的放射線治療により病変の制御が高い確率で期待できます。毎日の通院が可能であれば外来での治療も可能です。進行期の大きな病変やリンパ節転移がある場合、また血管肉腫や悪性黒色腫では、放射線治療中に抗がん剤を併用することがあります。

当院では、強度変調放射線治療(IMRT/強度変調回転放射線治療(VMAT)などの最新の高精度な放射線治療が実施可能です。より病変に放射線を集中し、周囲の正常臓器の放射線量を軽減することで、高い治療効果と副作用の軽減が期待できます。

(2)    手術後の再発予防を目的とした放射線治療

手術で摘出した皮膚がんの周囲への浸潤が強い場合などに、再発予防を目的とした放射線治療を行います。再発や転移を生じるリスクが高い場合には、抗がん剤を併用することがあります。

(3)    少数個の再発・転移に対する救済的放射線治療

手術後に再発した皮膚がんが限局している場合、また少数個(13個程度)の遠隔転移を生じた場合に、薬物療法に加えて救済的な放射線治療を選択することが可能です。遠隔転移は肺の転移、リンパ節転移、骨転移などが対象となります。治療した腫瘍の高い制御効果が期待できます。特に5cm以下の少数個の肺転移に対しては、定位放射線治療(ピンポイント照射)が選択できます。

(4)    脳転移に対する放射線治療

脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御効果が期待できます。

(5)    緩和的放射線治療

他の臓器へ転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。皮膚病変からの出血の止血や疼痛の緩和が得られます。また、骨転移による疼痛の鎮痛や神経症状の改善といった症状緩和に有効です。緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。治療期間は2週間以内が多く、状況に応じて1回のみの治療も選択可能です。

悪性黒色腫では、免疫チェックポイント阻害剤の治療効果を高める目的でも、放射線治療を追加することがあります。

(6)    温熱療法 (ハイパーサーミア)

当院では放射線治療や抗がん剤の治療効果を高める温熱療法を取り入れています。特に悪性黒色腫や血管肉腫は放射線治療が効きにくい腫瘍ですが、温熱療法を併用することで治療効果の改善が期待できます。がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパットで挟み込み高周波電流を流して加温します。1回の加温時間は4060分程度で、週に1~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。

放射線治療科外来では上記治療の内容を専門医からより詳しくご説明しています。

8 セカンドオピニオンの受け入れ  

     (  可  )

9 患者さんにメッセージ

 皮膚がんの多くは直接見たり触ったりすることができます。患者さん自身が皮膚がんの存在に気が付き、早めに医療機関を受診することで早期発見につなげることが可能です。気になるできものがある、治りにくい傷がある、ほくろが急に大きくなった等、ご心配なことがある場合は皮膚科専門医にぜひご相談ください。