精巣がん
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病気について
精巣は男性ホルモンを分泌し、精子をつくる器官です。そこに発生する悪性腫瘍が精巣がんです。精巣がんの発生頻度は10万人あたりに1人とされ、比較的まれな腫瘍です。
好発年齢が20~40歳と働き盛りの若年男性に多いことが特徴で、危険因子として、家族歴(4-10倍)や停留精巣(2-8倍)、反対側の精巣がん(25倍)などがあります。
痛みのない精巣の腫大で気がつくことが多く、触診や超音波検査などで比較的容易に診断が可能です。また、初診時に約30%にすでに転移が見られ、転移による症状(腹痛、息切れ、咳など)で発見されることもあります。
診断について
精巣がんが疑われる場合、いくつかの検査を行います。
超音波検査
腫瘍の大きさや腫瘍内部の状態、左右差などを簡便に観察できるため初期評価として有用な検査です。
CT/MRI検査
腫瘍の大きさ、広がりをより詳細に確認する検査です。また、転移の有無を確認することができます。
腫瘍マーカー
血液検査であり、3種類の腫瘍マーカーが用いられます。(ヒト絨毛性ゴナドトロピン:hCG/αフェトプロテイン:AFP/乳酸脱水素酵素:LDH)。
これらは治療方針に大きく関係するため、必ず行う検査の一つです。
病理検査
組織型を確認することは治療方針を決める上で最も重要です。そのため、手術で腫瘍の摘出を行い、病理検査で組織型を確認します。
*精巣がんはいろいろな組織型を示しますが、主にセミノーマ(精上皮腫)と非セミノーマ(セミノーマ以外の組織型)に区別され、治療方針が異なります。
手術療法
外科的治療
下腹部を切開して精巣がんの疑われる腫瘍と精巣を一塊として摘出する手術を行います(高位精巣摘除術)。
これによって前述の組織型を確認します。手術時間は1時間程度であり、多くは術後数日で退院が可能です。
また、転移のある場合において、後述の抗がん剤治療の後に転移巣の摘出手術を行うことがあります(後腹膜リンパ節郭清術など)。
鏡視下治療(ロボット支援下を含む)
前述の転移巣の摘出手術を腹腔鏡手術で行うことがあります。精巣がんに関するあらゆる手術においてロボット支援下手術は保険適用がありません。
内視鏡的治療
該当なし
局所的治療(経皮的治療、カテーテル治療など)
該当なし
薬物療法
抗がん剤
精巣がんは抗がん剤の効果が非常に高いとされ、転移のある場合でも抗がん剤により治癒が期待できることがあります。そのため、当院では複数の作用の異なる抗がん剤を組み合わせた治療を行います。(BEP療法:ブレオマイシン・エトポシド、シスプラチン/ VIP療法:エトポシド・イホスファミド・シスプラチン/ TIP療法:パクリタキセル・イホスファミド・シスプラチン)。
BEP療法
最初に行う最も標準的な抗がん剤治療です(導入化学療法と呼ばれます)。
1コース3週間で3~4コース行うことが一般的です。主な合併症として、骨髄抑制(貧血、白血球減少)、消化器症状(食思不振、嘔吐)、間質性肺炎、脱毛、末梢神経障害(手指しびれ)、造精機能低下などがあります。
VIP療、TIP療法
抗がん剤治療後の再発例や腫瘍マーカーが陰性化しない場合に行う抗がん剤治療です(救済化学療法と呼ばれます)。
ホルモン(内分泌)薬
該当なし
分子標的薬
該当なし
免疫チェックポイント阻害薬
該当なし
その他
精子凍結保存
抗がん剤治療の副作用として造精機能低下があります(抗がん剤によって一時的に不妊になり、数年で回復することもありますが、一方で回復しないという報告もあります)。そのため、精子保存を希望される方は治療前に精子保存が可能な施設へご紹介し、凍結保存を行っていただきます。
放射線療法
精巣がんは放射線治療の効果が得られやすい場合が多く、手術後の再発を予防する目的や再発や転移病変に対し行います。最新鋭の放射線治療装置(VMAT)を用いて、周囲の正常臓器に優しく、かつ効果の高い放射線治療を行います。また、骨転移等による痛みがある場合には痛みを緩和する目的の放射線治療が有効です。
セカンドオピニオンの受け入れ
( 可 )
患者さんにメッセージ
当院ではこれまでに多くの患者さんの治療に携わってきました。その治療経験や最新の知見を基に、それぞれの患者さんに適した最良の治療を提供できるよう努めています。些細なことでもお気軽にご相談ください。
産業医科大学 医学部 泌尿器科学