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胃がん

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消化管内科、肝胆 

 

1 病気の概要

  

   我が国を含む東アジアは、胃がんの発生頻度の高い地域です。日本全国で一年間に約135,000人が胃がんと診断されており、これは大腸がんについで第2位の多さです。また、我が国において胃がんは悪性腫瘍による死亡原因の第3位であり、年間約45,000人の患者さんがお亡くなりになっています。

 胃がんの発生要因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染、喫煙、高塩分食などが挙げられ、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している人は感染していない人と比べて約5倍程度胃がんの発生リスクが高いといわれています。

 胃がんは早い段階から症状が出ることはほとんどなく、かなり進行してから現れます。代表的な症状としては、胃(みぞおち)の不快感や痛み、お腹のはり、食欲の低下、吐き気、黒い便や吐血などがあげられます。また、貧血をきっかけに胃がんが発見される場合もあります。ただし、かなり進行していても症状が現れない場合もあるため、定期的に検診をうけることが重要です。具体的には、内視鏡検査やバリウムを用いたレントゲン検査(胃X線造影検査)で胃の中に異常な凹凸などがないか見ることで診断することができます。なお、内視鏡検査では、粘膜のわずかな色の変化をとらえることができるため、凹凸が目立たないがんであっても発見できる場合があります。また、内視鏡検査の際にがんが疑われる粘膜を一部採取して病理検査を追加することもできます。

 

2 診断方法

   当院において胃がんの診断・治療は日本胃癌学会が発行している「胃癌取扱規約」や「胃癌治療ガイドライン」に準じて、がんの深さの程度、リンパ節への転移の有無、遠くの臓器への転移の有無でステージⅠからⅣに分類され、進行度によってどのような治療を行うか、どの程度の生存率が望めるかを決定します。

   がんというのは、がんができた臓器そのものだけに留まるわけではなく、まわりにあるリンパ節や離れた臓器(肝臓、肺など)に転移することがあります。そのため、胃がんの場合も胃の評価だけでなく、胃以外の臓器についてもしっかり調べる必要があります。

胃がんそのものの評価は、胃X線造影検査や内視鏡検査で行います。

 胃X線造影検査は、バリウムを飲んで、胃の中に病変があるかどうかを調べる検査です。昔から検診目的で行われることが多い検査ですが、がんの広がりやがんの深さの程度を調べることができるため、われわれの施設では主にがんが発見された方に行い、治療方針の決定に役立てています。

 内視鏡検査は、一般的には胃X線造影検査で異常を指摘された場合の精密検査目的として、あるいは胃の痛みや不快感などの消化器症状がある方の原因を調べる目的で行います。口あるいは鼻から内視鏡を挿入し、胃全体の観察を行います。胃がんがみつかった場合は、がんの広がりやがんの深さを詳しく評価するため、基本的には口から挿入する内視鏡を用います。その際に胃の中に青色の色素(インジゴカルミン)を散布する色素法や、特殊な光(NBI:狭帯域光観察)を照射する画像強調観察技術を用いて病変をより詳しく観察します。また、がんの深さの程度を評価する際に超音波装置を伴った内視鏡(超音波内視鏡)を用いる場合もあります。内視鏡検査に時間を要する場合や患者さんの苦痛の程度によっては鎮静剤を使用し、眠っている間に検査が終わる工夫をしています。

 胃X線造影検査や内視鏡検査では胃がんそのものの観察は行えますが、胃の外の情報を得ることはできません。リンパ節転移の有無や胃以外の臓器への転移については、CT検査、超音波検査、MRI検査、FDG-PET検査といった画像診断法を用いて調べます。ただし、これらの画像診断法全てを行うわけではなく、患者さんの病状に応じて必要な検査を選択します。また、治療前のみならず治療後に再発がないかどうかを調べる際にも使用します。 

 

3.治療について

1)手術療法

 ①外科的治療

 

   近年の胃カメラの普及によって早期の胃がんの発見が増えていますが、それでも発見時には進行がんとして認められる胃がんも少なくありません。進行胃がんの治療は胃癌を含む胃と転移している、もしくは転移している可能性のあるリンパ節を手術で摘出することです。早期胃がんに対しては後述するように鏡視下手術を行うことも増えてきていますが、開腹での胃がんの手術は現在でも標準治療として位置づけされております。

 以下ではまず代表的な胃がんの手術を説明します。

 

⑴  幽門側胃切除術

   全国的に広く行われている代表的な手術です。胃がんの中でも、胃の中央部(胃体部)及び胃の出口付近(幽門部)にできた胃がんに対して施行されます。

画像.png

   図のように胃を約1/3程度残すように切除します。胃がんの口側・肛門側ともに胃がんから距離をとって切離するため、通常は1/3程度の残胃ができますが、場合によっては1/3以下の残胃となることがあります。(発生した胃がんの場所によって異なります。)

 

   切除後はつなぎ直し(再建と言います)を行います。つなぎ直しの方法は全国的に様々な方法がおこなわれていますが、当科ではビルロート1法及びルーワイ法を取り入れています。手術前の体と同様に残胃から十二指腸に食べた食事が流れる方法がビルロート1法です。当科では、もともとの体と同様になるよう可能であればビルロート1法でつなぎ直しを行なっています。

○ビルロート1法

 

 

○ルーワイ法

十二指腸と残胃の距離が遠くなる場合は、残胃と小腸をつなぎ直すルーワイ法を行います。

 

 

⑵  胃全摘

   胃がんの中でも中央部より口側に発生し、手術で口側の胃を残すことができない場合に行います。

画像2.png

   この場合のつなぎ直しは当科では手技の均一化とそれによる安全性の向上の観点から、幽門側胃切除術のときのルーワイ法と同様に食道と小腸を吻合しています。

 

   以上の2つが胃がんの標準的な手術となりますが、当院では噴門側胃切除と行って、口側1/3切除の手術を導入し、できる限り正常な胃を残せるよう日々努力しています。

 

(3)  噴門側胃切除

   胃癌の中でもより中央部より口側に存在し、肛門側の胃を温存できる場合は噴門側胃切除術を行います。胃1/2程度と胃と十二指腸に間に存在する幽門輪を温存することにより、胃の貯留機能と排出調節機能を温存できることを期待されております。

画像3.png

   吻合方法は先に説明した幽門側胃切除術と胃全摘術とは異なリ、施設によって異なりますが、当院ではもともと噴門と呼ばれる食道と胃の境界部位に弁が存在することを重視し、外科的にこの逆流防止弁を作成する観音開きNo-knife法(下図)によって再建を行っております。

 

 

   近年の高齢化によって手術患者も高齢者が増えてきました。高齢者は持病を患っている方も多く、手術によるリスクも高いのが実際です。手術による弊害を合併症と言いますが、少しでも合併症のリスクを減らすために、多くの医師、看護師、臨床技師、理学療法士などの専門家と相談し、患者さん一人一人をチーム医療で診療しています。

 

 ②鏡視下治療(ロボット支援下を含む)

   従来の胃がんの手術は腹部正中に約15cm前後の切開で手術を行なっていましたが、近年医療技術の進歩に伴い複数箇所の小孔にて約7cmの傷で手術を行う腹腔鏡手術の手技が急速に普及しました。腹腔鏡のメリットは傷が小さいことで、術後の疼痛の軽減することで早期から離床が可能となり、離床することで食事摂取の改善に繋がり、食事摂取により術後回復の促進と患者さんにとって負担の少ない手術と言えます。

   1990年代から現在に至るまで全国的に普及しその適応は早期の胃がんから、進行胃がんへと徐々に適応が拡大されています。当院でも胃がんに対して腹腔鏡手術を行なっていますが、さらにがんの治療(根治性)に注意しながらも、より傷を小さく(小孔を減らし)胃の切除を行う減孔式手術も導入しています。

 

   また2018年からはロボット支援下での腹腔鏡手術も保険で認可され、当院でも導入しております。ロボット支援下の腹腔鏡手術では、傷こそ腹腔鏡手術と同じですが、より繊細な手術操作が可能となることから、術後の弊害(合併症)をより改善するという報告も見られます。

4 内視鏡的治療

 

 胃の壁は内側から粘膜層、粘膜下層、筋層、漿膜下層、漿膜という5つの層に分かれています。胃がんは最も内側の粘膜層から発生し、進行するにつれて深い層にがんがどんどん入り込んでいきます。早期胃がんはがんの深さが粘膜下層までにとどまっているがんとされていますが、早期胃がんの全てが内視鏡治療の適応となるわけではありません。がんの深さが粘膜下層の浅い層までにとどまっているもので、リンパ節に転移のない早期胃がんのみが内視鏡治療の適応となります。

内視鏡治療は外科的治療に比較して入院期間が短期間で、患者さんへの負担も軽くてすみます。特に、内視鏡治療では術後も胃が本来の大きさのままであるため、手術前後で食生活が大きく変化することがありません。内視鏡治療として主なものには内視鏡的粘膜切除術 (EMR) と内視鏡的粘膜下層剥離術 (ESD) がありますが、当院では胃がんに対する治療においてはESDを選択することがほとんどです。ESDは病変周囲の粘膜と病変の下の組織を専用のナイフで切開して剥がすという治療法で、技術的な難易度は高いものの、EMRと比較して切除すべき病変を確実に切除することができます。切除したがんは病理医が顕微鏡で細かく観察し、がんの深さや広がりを診断します。その結果をもとに内視鏡治療で根治できているかどうかを最終的に判断しますが、この際に正しい評価をするためには、がんをきれいに切除していることが重要であり、この点においてもESDは非常に優れた治療法です。

 

5 局所的治療


 該当なし

 

 

6 薬物療法

 

①抗がん剤

 化学療法は外科的治療や内視鏡的治療と異なり、胃から離れた部位に存在するがん細胞にも薬剤の効果が行き渡ります。化学療法を行う場面は大きく分けて二つあります。目に見えないがん細胞を死滅させて手術後の再発を抑える目的で行う「術後補助化学療法」と、胃から離れた臓器やリンパ節に転移しているため手術で取り除くことができない場合に行う「切除不能の進行・再発胃がんに対する化学療法」です。

 胃がんの化学療法で用いる抗がん剤は、殺細胞性抗がん剤、分子標的薬、免疫チェックポイント阻害薬の3つの種類に分けられます。殺細胞性抗がん剤は、がん細胞のDNAに働きかけ、これを障害することでがん細胞の増殖を抑えたり、がん細胞を死滅させたりする薬剤で、S-1、シスプラチン、イリノテカン、パクリタキセルなどがあります。分子標的薬は、がん細胞の増殖や転移などに関わる特定の分子だけを狙い撃ちにする薬剤で、トラスツズマブ、ラムシルマブがあります。また、がん細胞は免疫細胞から攻撃を受けないために免疫細胞に対してブレーキをかける仕組みを持っていますが、その仕組みを壊す薬剤が免疫チェックポイント阻害薬で、ニボルマブがあります。これらのなかから単独あるいは複数の薬剤を選択して化学療法を行いますが、ランダムに選択するのではなく、科学的に効果が証明され、ガイドラインで推奨されているメニューの中から患者さんの年齢、合併症、臓器機能(肝機能、腎機能、心機能、骨髄機能)など個人の特性を十分に評価したうえで選択します。

 化学療法は一次化学療法から開始し、継続することが難しい副作用が出現した場合や化学療法の効果がない場合に二次化学療法、三次化学療法に移行していきます。

 

一次化学療法

 一次化学療法に先立ちHER2(ハーツー)と呼ばれるタンパク質ががん細胞の増殖に関わっているかどうかを調べる検査を行います。これは胃がんの診断や治療の際に得たがん組織を用いて行う病理検査です。HER2が陽性であった場合はトラスツズマブという分子標的薬を殺細胞性抗がん剤と併用して使用することになります。

 

HER2陰性の場合

・  S-1 + シスプラチン

・  カペシタビン + シスプラチン

・  S-1 + オキサリプラチン

・  カペシタビン + オキサリプラチン

・  FOLFOX    

など

HER2陽性の場合

・  S-1 + シスプラチン + トラスツズマブ

・  カペシタビン + シスプラチン + トラスツズマブ

 

二次化学療法

 分子標的薬であるラムシルマブと殺細胞性抗がん剤のパクリタキセルを併用して行います。

・  ラムシルマブ + パクリタキセル または ナブパクリタキセル

 

三次化学療法以降

・  ニボルマブ(免疫チェックポイント阻害薬)

・  イリノテカン(殺細胞性抗がん剤)

・  トリフルリジン・チピラシル(殺細胞性抗がん剤)

・  S-1 + イリノテカン

・  ロンサーフ

など

 

 

7 放射線治療

 胃がんに対する初回の治療は、手術が優先され、手術前後の補助的な放射線治療の役割も確立されたものはありません。胃がんに対する放射線治療の役割は下記になります。

 

  (1)小数個の再発・転移に対する救済的放射線治療

  手術した腹部の再発、あるいは小数個(1~3個程度)の遠隔転移を生じた場合に、薬物療法に加え救済的な放射線治療を選択することが可能です。

 遠隔転移の部位は、肺や肝臓の転移、骨転移、鎖骨上・縦隔・骨盤などのリンパ節転移が対象となります。治療した腫瘍の高い制御効果が期待できます。

 

  (2)緩和的放射線治療

 他の臓器へ他数個の転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。

 胃の腫瘍からの出血の止血や疼痛の鎮痛、また骨転移に伴う疼痛や神経症状の緩和に有効です。

 緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。治療期間は3週間内が多く、状況に応じて1回のみの治療も選択可能です。

 

  (3)脳転移に対する放射線治療

 脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。

 患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御効果が期待できます。

 

  (4)温熱療法(ハイパーサーミア)

 当院では、再発した胃がんや転移病変に対して放射線治療や抗がん剤の治療効果を高める温熱療法を取り入れています。

 がんの存在する領域の皮膚表面を2方向からパットで挟み込み高周波電流を流して加温します。パット内の液体を還流させ、皮膚表面の熱感や痛みを抑えます。

 1回の加温時間は40~60分程度で、週に1回~2回、放射線治療を行っている期間中に総5回程度行います。 

 

8 患者さんへ

(1).セカンドオピニオンの受け入れ    (  可  )

当院の専門医が外来治療もしくは入院されている患者さんに、現在の検査・治療について第3者的立場から説明し、   治療方針の決定の手助けとなるようセカンドオピニオン外来を行っています。

 

(2). 患者さんにメッセージ

胃がんといっても進み具合(進行度)によっては治療法が大きく異なりますが、当院では治療に当たって消化器内科と消化器外科との密な連携を元に、それぞれの専門的な知識と技術で患者さんにとってより良い治療となるよう日々診療しています。


産業医科大学 医学部 第三内科学  患者様へ

https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/3nai/homepage/m_kanjya.html

 

産業医科大学 医学部 第一外科学教室  患者の皆様へ 上部消化管(食道・胃)グループ

https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/1geka/m_group1.html