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小腸がん

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1 病気について(概要、疫学的なものも含めて)

 小腸とは、十二指腸、空腸、回腸のことを指します。胃と大腸の間にあり、約67mある臓器で食物を消化、吸収する役割があります。

 小腸の悪性腫瘍には神経内分泌腫瘍、腺癌、悪性リンパ腫、肉腫などがありますが、ここでは小腸腺癌について解説します。

 小腸腺癌は、全消化管悪性腫瘍のうち5%以下であり、欧米における小腸腺癌の年間発症率は10万人あたり0.4人前後と稀な腫瘍です。

2 診断について

 小腸は消化管の中間にある臓器ですので、早期での発見がやや困難です。十二指腸の途中までは上部消化管内視鏡(いわゆる胃カメラ)で観察できますが、それより奥の小腸は通常の内視鏡による観察が不可能ですので、貧血の進行、癌にために腸が狭くなったことによる腹痛や腸閉塞をきっかけに比較的進行した状態で発見されることが少なくありません。

 症状や、CT検査などで小腸の腫瘍が疑われた場合は、カプセル内視鏡検査やバリウムによる小腸造影検査を行います。ただし、これらの検査では病気の部分の細胞を採取(生検)することができないため、バルーン小腸内視鏡を行います。バルーン小腸内視鏡は、内視鏡の外側にバルーンのついた筒を沿わせて小腸を手繰り寄せながら深部の小腸まで挿入していくことができる特殊な内視鏡です。腫瘍の部位が口側から近いのか、肛門側から近いのかをカプセル内視鏡やバリウム検査で判断し、近いと判断された方から挿入していき、詳細な観察や生検を行うことができます。但し、小腸は長い臓器なのでバルーン小腸内視鏡では届かない場合もあり、確定診断のために手術が必要になることも少なくありません。

3 外科的治療

 

小腸癌は稀な腫瘍であるため、科学的根拠に基づく標準治療(ガイドライン)は確立されていません。内視鏡的治療が困難であり、比較的進行した状態で発見されることが多いため、小腸癌は手術療法が選択されることが多い疾患です。腫瘍から距離をとり、近くの

リンパ節を含めた腸管切除を行います。手術方法としてはお腹を大きく開ける開腹手術と小さな穴を開けて行うと腹腔鏡手術に分けられます。腫瘍が大きい場合や腹腔鏡手術ではリスクが高いと判断した場合は開腹手術が選択されます。

  (2)腹腔鏡手術(ロボット支援下を含む)

 現在当院では体にやさしい腹腔鏡手術を積極的に導入しております。腹腔鏡手術はお腹に小さな孔(512mm)を数カ所開けて、そこからカメラや手術鉗子を挿入し、手術を行う方法です。お腹を大きく開ける開腹手術に比べると傷が小さく、出血量が少ないなどのメリットがあります。また、術後は傷の痛みが軽く、体力の回復も早くなります。しかし、開腹手術と比較して手術時間がやや長く、腹腔鏡手術の十分な経験が必要になります。

 

4 内視鏡的治療

 早期の食道癌、胃癌、大腸癌に対する内視鏡治療(粘膜切除術:EMR、粘膜下層剥離術:ESD)は普及していますが、小腸癌に対する内視鏡治療の安全性、有効性はまだ確立していません。その理由としては、(1)症例数が少ないために病気の深さによるリンパ節転移率がまだ分かっていない、(2)小腸の粘膜は固いうえに、壁の筋肉の層が薄く、穿孔などの合併症が起きやすいことなどが挙げられます。このため、内視鏡治療を行うか外科治療を行うかどうかは慎重に適応を検討しています。

5 局所的治療(経皮的治療、カテーテル治療など)

 該当なし

6 薬物療法

(1)抗がん剤

 小腸腺癌は稀な腫瘍であるため、十分な科学的根拠に基づく治療(標準治療)は確立されていません。切除できる場合は外科的切除を行いますが、遠隔転移があり切除できない場合や、転移再発した場合は大腸癌や胃癌に用いられる化学療法を行うのが一般的でした(但し小腸癌に対しては保険償還されていません)。

 以前から小腸癌に対して、大腸癌に用いられていたFOLFOX療法(オキサリプラチン、フルオロフラシル、レボホリナートカルシウムの併用療法)の有効性が報告されていたことより、わが国で20185月から使用できるようになりました。

  (2)分子標的薬

 小腸癌に対する分子標的治療薬の有効性は確立されておりません。

  (3)免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬のうち、ペムブロリズマブという薬剤が「癌化学療法後に増悪した進行・再発の高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-high)を有する固形癌」に対して保険承認されています。マイクロサテライト不安定性とは、遺伝子に傷が生じたときの修復機構に欠陥があるため遺伝子に複数の傷が生じている状態のことで、この様な癌に対してはペムブロリズマブの有効性が高いことが分かっています。

 MSI-highであるかどうかは、腫瘍組織を用いて調べます。小腸癌に対するMSI-highの頻度は8%程度と、残念ながら高いものではありませんが、標準治療が確立されていない腫瘍ですので大切な選択肢の一つになり得ます。

  (4)ホルモン剤

  (5)その他

7 放射線療法

 

小腸がんに対する初回治療は手術が優先され、手術前・手術後の補助的な放射線治療の役割も確立されたものはありません。

(1)  少数個の再発・転移に対する救済的放射線治療

腹部や骨盤内リンパ節の再発、あるいは少数個(13個程度)の遠隔転移を生じた場合に、薬物療法に加え救済的な放射線治療を選択することが可能です。遠隔転移の部位は、腹部・鎖骨上・縦隔などのリンパ節転移、肺や肝臓の転移、骨転移などが対象となります。治療した腫瘍の高い制御効果が期待できます。

(2) 緩和的放射線治療

他の臓器へ多数個の転移を生じている状況では、緩和的な放射線治療が適応となり得ます。腫瘍からの出血の止血や疼痛の鎮痛、また骨転移に伴う疼痛や神経症状の緩和に有効です。緩和的放射線治療に必要となる放射線量は少ないため、治療に伴う副作用は軽微です。治療期間は2週間以内が多く、状況に応じて1回のみの治療も選択可能です。

(3)   脳転移に対する放射線治療

脳転移を生じた場合に放射線治療が有効です。当院では、強度変調回転放射線治療(VMAT)を用いた定位放射線治療(ピンポイント照射)が可能です。患者さんに負担の少ない短い治療時間で、脳転移の高い制御効果が期待できます。

 

 

8 セカンドオピニオンの受け入れ

   ( 可 ) 

9 患者さんにメッセージ

小腸癌は稀な腫瘍ですので、当院では外科、内科、放射線科で話し合い、患者さんに最も適切な治療を選択します。