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開学記念日:4月28日

小児脳腫瘍

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1 病気について(概要、疫学的なものも含めて)

 脳腫瘍は、白血病に次いで2番目に多く見つかる小児がんで、中枢神経系と呼ばれる脳や脊髄に生じます。日本全国で脳腫瘍と診断される子どもの数は、およそ年間500-750人程度と考えられています。子どもの脳腫瘍にはとても多くの種類があり、治療法も予後も大きく異なります。

原発性脳腫瘍の種類は、約150種類存在し、それぞれの脳腫瘍で、悪性や良性など全く性質が異なり、治療方法や余命も全く異なります。脳腫瘍は、頭の中にできる腫瘍ですが、脳や頭蓋骨さらには、目の奥や脳底部に存在しホルモンを産生する下垂体などあらゆる場所に発生します。成人と同様に、脳腫瘍それぞれにおいて頭痛、手足の麻痺、言語障害、視力障害やホルモン異常といった様々な症状がみられます。同じ脳腫瘍でも発生する場所によって症状も経過も全く異なります。特に、1歳までの乳幼児などは意思の疎通ができずに、熱が出ないのにけいれんをおこし、繰り返す嘔吐などを呈する場合があり、これらが、脳腫瘍の症状とは気が付きにくく、腫瘍が大きくなってから発見されることがあります。手術で可能な限り摘出が必要な脳腫瘍もあれば、化学療法(抗がん剤)や放射線治療がよく効く脳腫瘍もあります。現在、WHO(世界保健機構)の悪性度分類において、グレード1(良性)~4(悪性)で大まかに分けられていますが、たとえグレード1の良性脳腫瘍とはいっても、十何年も全く成長しない場合や、非常にゆっくり成長する場合もあり、発生する場所によっては非常に重篤な症状を示す場合があります。また、悪性転化といって、最初はグレード1の良性脳腫瘍であったとしても、数年かけてその性質が変わりグレード4の悪性脳腫瘍に変化する場合もあります。

 

2 診断について

成人と同様に、頭部MRI検査を行います(造影剤を使用することが多いです)。MRI検査を行うことで、どこに脳腫瘍があるのか、どれくらいの大きさなのかが分かります。この時点で、約150種類ぐらいある脳腫瘍の中から、おおよそ見当がつきます。重要なことは、頭部MRIでははっきりとした診断(確定診断)はつきません。確定診断をするためには、病変の一部を採取して、病理検査さらには遺伝子診断を行い、最終的に診断されます。すなわち、確定診断を得るためには、手術が必要となります。ただし、脳の手術はリスクを伴います。そのリスクを考えても、手術によって早く診断をして次の治療に移るほうが良い場合と、手術を避けて、まず頭部MRI検査で経過を観察しながら、脳腫瘍が増大してきた時点で手術による診断を行ったほうが良い場合もあります。したがって、どこの場所に、どのような大きさの腫瘍があり、頭部MRI検査でどういった脳腫瘍が考えられるかによって、手術を行って診断したほうがよいのかどうかを判断します。髄膜炎のときに行う検査と同様に、手術を行わずに背中から針をさして脳せき髄液をすこし採取する検査(腰椎穿刺)を行い、脳せき髄液のなかに含まれる細胞を検査することで脳腫瘍の種類がわかることもあります。

3 治療について

 1)手術療法

  (1)外科的治療

外科的治療の目的は3つあり、1)できる限り腫瘍を減らして脳への負担を解除する(減圧)、2)病変を採取して確定診断をつける(病理・遺伝子診断)、3)脳腫瘍により脳せき髄液の流れが障害され脳せき髄液が脳内にたまる状態(水頭症)を解除するといった目的があります。12)については、脳腫瘍そのものに対する外科的治療ですが、脳腫瘍の手術の方法として2つの方法(開頭腫瘍摘出術・定位的脳腫瘍生検術)があります。開頭腫瘍摘出術は、手術用顕微鏡を使用して頭部を開頭し、神経や血管と脳腫瘍を分けながら摘出していきます。安全に脳腫瘍を摘出するために、さまざまな手術支援システムが現在開発されています。脳腫瘍は目で見てわかる場合とそうでない場合があります。実際に脳のどの部位を操作しているのかリアルタイムに画像表示できるナビゲーションシステムが使用されます。さらには、手術中に脳や神経に直接電気刺激を行いながら脳腫瘍に囲まれた脳神経を探すことや、手足の動きを常に確認しながら行うシステム(電気生理モニタリング)などさまざまな技術が開発されています。現在の脳腫瘍の手術は、患児の年齢にもよりますが、それら最新システムを最大限活用して、合併症を最小限におさえるように手術が行われます。定位的脳腫瘍生検術は、脳の深部に脳腫瘍が存在し、診断を目的としてごく一部だけ脳腫瘍を採取する場合に行われます。3)の水頭症に対する手術ですが、もともと人間には脳内に脳せき髄液が貯留する空間(脳室)が存在しますが、そこに細いチューブを挿入して一時的に脳せき髄液を頭蓋外へ排液する場合と、チューブそのものを体の中に埋め込む手術(シャント術)を行う場合があります。時に、神経内視鏡を用いて脳室内にカメラをいれて脳せき髄液の流れをつくる手術を行います。

  (2)鏡視下治療(ロボット支援下を含む)

    該当なし

4 内視鏡的治療

 近年、脳神経外科領域においても神経内視鏡技術が発達しています。鼻の孔から神経内視鏡を挿入して、頭蓋底部(特に下垂体病変)に存在する脳腫瘍を摘出します。神経内視鏡の解像度は年々進化しており、鮮明な画像を確認しながら手術操作を進めることができます。鮮明な画像が得られることで、腫瘍と周囲にある正常構造物との境界を確実に確認し腫瘍を安全に摘出することが可能となります。さらに、頭蓋底部に大きく存在する脳腫瘍は、神経内視鏡と従来の顕微鏡手術を使用した開頭術と併用して脳腫瘍を摘出します。前述のごとく、神経内視鏡を使って水頭症を行うことや、脳室内に存在する脳腫瘍の一部を採取することもあります。

5 局所的治療(経皮的治療、カテーテル治療など)

カテーテル治療(血管内治療)で脳腫瘍そのものを治療することはありません。しかし、脳腫瘍の手術の難しさの一つとして手術中の脳出血にどのように対応するかが重要となります。特に、血流が多い脳腫瘍においては、患児の年齢にもよりますが、摘出する前に、あらかじめ脳腫瘍を栄養する動脈(腫瘍血管)をカテーテル治療で動脈を詰めておく処置(腫瘍血管塞栓術)を行うことで、手術中に脳腫瘍からの出血量を減少させることが可能となり、より安全に摘出することができます。

6 薬物療法

  (1)抗がん剤

  腫瘍の種類や悪性度に応じて、手術や放射線治療、化学療法を組み合わせた治療を行います。抗がん剤治療は、小児腫瘍専門医、看護師、薬剤師など、多職種の専門家で構成されるチームによって行われます。また、国内外の臨床試験の成績などを参考に、現時点で最良と考えられる治療法(標準治療)を提供します。

7 放射線療法 

放射線治療の役割は、根治照射(腫瘍を消失させる)、術前・術後照射(根治率を高める)、緩和照射(症状を和らげる)などに分けられます。

脳腫瘍は大きく良性腫瘍と悪性腫瘍に分けられます。良性腫瘍であっても、身体に悪い影響を与えたり、生命に関わる場合、治療対象となることがあります。良性腫瘍に対する根治治療としては、腫瘍の性質や広がり、存在する場所、腫瘍による身体症状などにより、手術または手術+放射線治療または放射線治療が選択されます。

当院における脳腫瘍に対する放射線治療は、放射線をできるだけ腫瘍に集中することで治療効果を上げ、正常組織への余分な照射を少なくすることで副作用を軽減するために、強度変調放射線治療(IMRT)や定位放射線治療(SRS,SRT)などの高精度放射線治療を積極的に活用しています。

小児の良性腫瘍は放射線治療の適応となることは少なく、基本的に手術が優先されますが、手術が難しい場所であったり、手術で取り残しがある場合、手術後の再発などでは、放射線治療で根治を目指すことがあります。特に聴神経腫瘍では、定位放射線治療を行うことにより、手術と変わらない腫瘍制御や聴力・顔面神経温存が期待できます。

脳から発生した脳原発悪性腫瘍の場合、手術+放射線治療(+抗がん剤・分子標的薬)が選択されることが多くあります。手術で腫瘍をできる限り取り除いた後に放射線治療を行うことで、腫瘍の完全消失を目指します。(術後根治照射)

他のがんから脳に転移したり、脳に再発が見られた場合、腫瘍のサイズが大きかったり、神経症状がある時には手術を行うこともありますが、放射線治療で癌の消失を目指すことが選択されることが多くあります。特に定位放射線治療(ピンポイント照射)は体の負担が少なく手術に近い局所制御が得られます。(転移巣に対する根治照射)

脳転移が無数にある場合や全身状態が良くない場合でも、放射線治療によってさまざまな生活の質(QOL)を悪化させる原因を和らげたり取り除いたりする効果が期待できることがあります。(緩和照射)

8 セカンドオピニオンの受け入れ 

      (  可  )

9 患者さんにメッセージ

 産業医科大学病院の小児科は小児血液・がん専門医研修施設として、小児がんのお子さんの治療を行っています。特に脳腫瘍は、小児科のみならず、放射線診断科、放射線治療科、脳神経外科との連携が不可欠です。定期的なカンファレンスを行い、適切な治療を提供いたします。また、患者さんのみならず、ご家族そして兄弟のサポートも行えるよう、チーム一丸となって診療に取り組みます。