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国際交流便り(第3号) - 2013年8月19日配信

ミクロネシア ポンペイ(病院編)

 

私の勤務先のポンペイ州立病院は築35年の1階建てのコンクリート造りで、入院ベッド90床、一般内科(男女)、外科(男女)、小児科、産婦人科があり、1ケ月約2,000人を収容し、1診療科14人の大部屋プラス個室で構成されています。外来は1ケ月約3,000人の患者が訪れます。診察券も診療日の案内もないかわりに、患者からのクレームもありません。最近、アメリカの援助で雨漏りの補修工事、配管工事などのリノベーション工事が終了しましたが、設備は古く、薬品も不足がちで近くの薬局からゼネリック薬品を仕入れている状況です。医師が20人(ミクロネシア全体で60人)、看護師が60人、(ミクロネシア全体で260人)の職員、委託業者などで構成されています。ガンなどの精密検査を要する設備がないため、そのような患者はグアムやフィリピンで検査、手術を受けることになります。

 

 また、医療保険に入っている人が少ないことや診療費を払えない人が多いことが病院経営に影響を及ぼしています。国は医療保険に入ること、入院日数を短くすること、使用頻度の高い薬品の80%を在庫することなど多くの項目に細かい数値目標を付していますが、実態とはかなりかい離しています。

 

 私の任務はQAQuality Assurance Service)、病院全体の業務改善です。4半期ごとに、カウンターパートと一緒に各部署(40セクション)に出向いて、調査票をもとに現場の実体調査、評価、公表までの一連の流れを担当することになっています。また、医療事故調査、マニュアルの整備状況のチエックなど一通りのメニューが組まれています。業務範囲はこの州立病院だけではなく、州の保健省に所属する薬局やヘルスセンターも対象となっていますので守備範囲は広いのです。ミクロネシア4州はそれぞれ異なった現地語があり、英語が共通語ですが、英語でも大変なのに会議など肝心なところは現地語であるためついていけないのが実情です。毎日、日記をつけてその日の出来事を反芻し、整理することで自分を納得させています。

 

 私は毎日の病棟、外来、トイレなどの巡視やスタッフとの会話で気が付いたことを毎日のレポートに写真を添付してカウンターパートに送信します。病棟の設備部品の欠如、不衛生な食品管理、不十分な清掃、節電など枚挙にいとまがありません。加えて1週間の活動結果として私なりの提案をチーフとカウンターパートに報告します。

 

 問題は実行する人です、私は特に若い人を中心にしたプロジェクトを考えています。どこまでできるかわかりませんが、問題意識と主体は彼らにあることの認識はしっかりともってほしい、そして外国への依存体質が強く残っているこれまでの習慣から早く脱却して、自分で汗をかくことへ方向転換してほしいと思っています。

 

 病院のなかを歩いていますといろいろな考えがわいてきますが、あれもこれもではまとまりがありませんから、問題意識と優先すべきことを分けて考えています。こちらの言葉でエキセキス(少しずつ)が今の私の座右の銘です。

 

 病院の問題点は、これはミクロネシア全体に及ぶことですが、アメリカからの財政支援が今後低減され、10年後にはゼロになるということです。このため、経済の立て直しが迫られており、すべての予算が見直し、削減されている状況下にあり、加えて人材不足、後継者となるべき若い人がいない、また、お国柄でしょうかリーダーシップが発揮されない、新しいことに挑戦する意欲、改善意欲が発揮されないなどの問題点が見られます。ピンチはチャンスということを理解し、本当の意味で独立国になってほしいと思っています。

 

 病院の中に散在する問題にどう対処するか、しかも35年経ってそれなりに完成されているシステムをどう改善していくか、息のながい問題ではありますが、結論をいそがないこと、問題意識をもって一緒に努力する過程を大切にしたいと思っています。日本人や日本の良質な製品に対する彼らの関心は非常に高いものがあり、私もそれなりに評価されていると自負しています。

 

 私の助言や行動により彼らが少しでも方向性を見出すことができれば幸いと思って努力しているところです。

 

2013年8月 

JICAシニアボランテイア 大藤 哲生

 

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