国際センターからの挨拶

産業医科大学は、1978年の設立にあたり、大学名に「Japan」を冠しました。それは、産業医学が21世紀に世界各地へと広まり、諸外国にも産業医科大学が設立されるという見通しを夢見ていたからです。

本学は、1981年より国際シンポジウムを開催し、1985年には国際協力機構(JICA)の産業医学国際集団研修を受託し、1988年からは産業生態科学研究所が世界保健機関(WHO)の協力機関に継続して指定されるなど、多彩な国際交流活動を推進してまいりました。そして、2012年には、学内の各組織による国際交流事業を統合する形で、国際交流センター(初代:高橋謙名誉教授、後任:中田光紀教授、東敏昭学長(当時)、上野晋産業生態科学研究所長)が設立されました。さらに、2022年には、より一層の発展を目指して国際センターが発足し(初代:田中良哉教授)、国際シンポジウムを毎年開催する体制が整い、また世界各国の大学等との交流協定(MOU)の締結数が飛躍的に増加しました。

私は、2025年より国際センター長を引き継ぎました。前職の日本鋼管(NKK)京浜製鉄所専属産業医としてはカリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)での産業医学レジデント研修や(タイ)マヒドン大学ASEAN Institute of Health DevelopmentでのJICA事業に携わり、本学産業保健管理学教授としてはベトナム保健省でのWHO二国間プロジェクト専門家や国際産業保健学会(ICOH)の理事など、さまざまな国際的活動を経験してまいりました。これらの経験を活かし、微力ながら国際センターの発展に尽力してまいります。

現在、国際センターでは、国際労働機関(ILO)をはじめとする31の機関と締結したMOUに基づく交流事業を展開しております。また、産業医学の国際的動向を把握し、将来を展望する場として、毎年秋に国際シンポジウムを開催しております。加えて、本学で学ぶ外国人留学生や短期研修生の教育・研修支援、医学部と産業保健学部における学生の国際交流、国立台湾大学主幹による大学院の国際遠隔講義(毎年9月から週1回開講)、日中韓産業医学学術会議等の国際会議への教職員の参加など、多岐にわたる取り組みを行っております。

近年のICTAI技術の著しい進展により、距離や言語の壁が大きく低減され、国際的な連携や協働は容易になりました。また、日本企業のグローバル化が加速する中、産業保健の分野では国際的な知識や視点はますます重要となっています。今後も、産業医科大学が産業医学・産業保健分野における国際的な役割をさらに広く果たし、世界の中でその存在がより一層認知されるよう、力を尽くしてまいります。

                                                センター長 堀江 正知


 

 このたび、国際センター副センター長を拝命いたしました。私自身、この重要な役割を担うことに対し、大きな責任と期待を感じております。現代の大学における国際交流の重要性はますます高まっています。グローバル化が進む中で、異なる文化・価値観を理解し、協働する力は、学生の成長に欠かせない要素となりました。また、グローバルサウス・グローバルノースの視点から考えると、国際交流は単なる学術的なつながりではなく、世界全体の持続可能な発展に貢献する機会でもあります。

 国際センターでは、多様な留学生支援、海外大学との提携強化、国際共同研究の促進、国際シンポジウムの主催など、幅広い活動を展開しております。私は副センター長として、これらの取り組みをさらに発展させるとともに、より多くの学生・教職員が国際的な経験を得られるよう環境づくりに努めてまいります。異文化交流の場は、新しい価値を生み出し、社会をより豊かにする原動力です。このセンターが国際的な架け橋となるよう、皆様と協力して取り組んでいきたいと考えています。どうぞ、よろしくお願いいたします。

                                                 副センター長 榎原 毅


 私は本学を卒業した後、タイに留学しました。アジアの国々を訪問すると、本学で研修を受けたり、共同研究をしている研究者によく出会います。そのような時、私は卒業生として母校をとても誇らしく思いますし、そのような人のつながりから次の研究につながっていくことも少なくありません。アジアの途上国では、じん肺や化学物質中毒、過重労働など日本が経験してきた産業保健の課題に直面しています。産業医大がそのような国々に貢献できる機会を増やしていきたいと考えています。

 また、国際交流や海外留学に興味がある学生のキャリアを応援したり、本学の外国人教員や留学生が研究や勉学に集中できるようサポートしていきます。ともすれば、本学の学生は単科医科大学として閉鎖的な日々を過ごしがちですが、知識や技術だけでなく、海外の多様な文化や価値観に触れることで人としても成長してほしいと思います。

副センター長 石丸 知宏