微生物学 教育内容
医学部学生教育(医学部2年次生)
臨床現場において微生物は、市中感染症の要因となるだけでなく、院内感染、耐性菌感染症をはじめ、常に大きな問題を引き起こす要因となっています。医師は、それぞれの病原体の感染経路や性質を十分に理解したうえで、感染予防策、抗菌薬の適正使用について自分自身で考えながら行動することが要求されます。微生物学の教育はそのための大事な基礎です。学部学生の皆さんには、臨床医学との関連性を意識した微生物学教育を行い、適切な感染予防、感染症治療を実践できる医師の養成を目指します。
●講 義 : 戸田新細菌学改訂34版(南山堂)に沿って行う。
●実 習 : 実習書(微生物学教室作)に沿って行う。
●教育要項 :
【一般項目】
医学部における微生物学は、微生物の示す生命現象そのものを理解する生物学的側面と、感染という現象に焦点を合わせ感染症を理解するための基礎的概念を養うという2つの面を有している。従って、このような微生物の有する両面性に考慮を払うことにより、感染症の発症の機構、感染症の診断法・予防法・治療法などについての基本的原理を修得する。一方、産業医学において問題となる感染症について基本知識を習得する。
【行動目標】
1.
個々の病原微生物の有する性状・特徴・病原性について理解し、それらを統合することにより病原微生物のもつ基本的な性質を説明できる。
2.
病原微生物による感染と発症のメカニズムを宿主・寄生体関係という観点から説明できる。
3.
病原微生物の侵襲に対する宿主側の非特異的及び特異的防御反応を説明できる。
4.
感染症を予防・コントロールするための公衆衛生学的対策を説明することができる。
5.
滅菌・消毒法を理解し、感染の予防を行うことができる。
6.
化学療法剤の種類・特徴・作用機序等を理解し、感染症の治療に応用することができる。また、耐性について説明できる。
7.
細菌・ウィルス、真菌の培養法や同定法等、さらに、免疫学的診断法についても説明でき、感染症の総合的な診断をすることができる。
8.
生活習慣と密接に結びついて流行・蔓延する疾患があることを認識する。
9.
海外在留邦人の健康問題についても理解し、適切な予防方法を述べることができるようにする。
大学院生教育(大学院 医学専攻)
大学院生の皆さんには、現象の発見の喜びを通して研究の世界の魅力を知ってもらいたいと願っています。そして、その発見に端を発する独自の研究テーマに取り組んでもらいたいと考えています。それは必ずしも今すぐに社会に注目されるような発見や研究成果でなくても構いません。大切なことは、今後に続く研究者のために、たとえ小さくとも確実な歩みを残していくことだと思います。自然に対していつも謙虚な姿勢で、既成概念にとらわれることなく、目の前で起こっている現象をじっくり観察して下さい。
< 研究活動の例 >
・抗酸菌の細胞内増殖
・網羅的な細菌叢解析手法を用いた新規感染症診断法の構築
・環境試料(土、水、空気)中の微生物の評価
・マイコプラズマの薬剤耐性機序
・ヘリコバクター・ピロリの形態変化の解明
・感染性心内膜炎の保存的治療に関する研究
・レプトスピラの疫学解析、レプトスピラ感染症の病態解明
・劇症型A群レンサ球菌感染症の発症メカニズムの解明
産業保健学部学生教育(「感染症学」; 看護学科1年次生)
●講 義 : 系統看護学講座微生物学(医学書院)に沿って行う。
●実 習 : 皮膚、鼻腔常在菌の培養を行う。
●教育要項 :
【一般目標】
感染症学(Infectious Diseases)では、感染症の原因である病原微生物(Pathogens)とはなにか、感染症予防あるいは制御のための理論と方法を学ぶ。臨床の場では感染症の診断や治療、そして易感染患者(Compromised host)に対する感染防止対策などの総合的看護活動が求められている。また、地域社会や職場環境を対象とした保健・衛生活動においては、感染症の拡大予防索など、看護技術者の扱う役割は広範かつ重大である。こうした活動を適切に、そして積極的に進めるための微生物学ならびに感染症学の基礎知識を習得することを本講のねらいとする。
【行動目標】
1. 感染症の発生要因につき、その概要を説明することができる。
2. 主要な病原微生物につき、その感染経路、病原性、予防を説明することができる。
3. 宿主側の因子を列挙しそれを説明することができる。
4. 消毒や滅菌、無菌操作の意味、その目的を説明することができる。
5. 消毒や滅菌の具体的方法を理解し、それを感染防止に向けて適切に応用することができる。
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産業医科大学医学部微生物学
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文責:微生物学
更新日:2021年5月18日