【B】著作権

知的財産Q&A

1.著作権とは、どのような権利ですか?

 著作権とは、著作物を創作したことにより著作者に発生する権利です。著作権にいう著作物には、論文、講演、絵画、プログラム、学術的な性質を有する図面などが含まれます。著作権には、複製権(コピーする権利)、公衆送信権(インターネット等で公に送信する権利)、翻訳権(翻訳する権利)、二次的著作物の利用に関する権利などがあります。著作物を利用する場合には、著作権の権利を有する人(著作権者)から許諾を得なくてはなりません。著作権を侵害した場合は、損害賠償請求などの民事上の請求だけではなく、刑事上の制裁を受けることもあります。


2.講義や実習のために作成した教材は、知的財産として保護できますか?

 著作権法では、著作物を「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいう。」(同法第2条第1項)と定義していますので、教材が独自の表現方法により創作的に著述された著作物であれば保護されます。
一方、注意しなければならないことは、既存の著作物を利用して教材を作成する場合です。著作権法には、このような場合に無断で他人の著作物を利用できる例外規定が設けられています(同法第35条第1項)。例えば、講義のために他人の著作物の一部を利用してパワーポイントのスライドを作成し、学生に配付する場合などは、この規定により、著作権者の許諾を得ずに行えます。但し、この例外規定に基づき、著作物の利用を行う場合には、当該作品の題名、著作者名などを明示しなければなりません(出所の明示)。また、作成した教材を目的外使用した場合には、著作権者の利益を不当に害する恐れがありますので十分注意してください。


3.講義用に共同で作成したテキストを他の教員も使用できるようにしたいと思いますが、注意すべきことがありますか?

 テキストが複数の教職員が共同して創作され、分離して個別的に利用することができない場合、共同著作物(著作権法第2条第1項12号)になります。共同著作物の著作権は、各共同著作者の共有となりますので、共有著作権は共有者全員の合意によらなければ行使することができないとされています(同条第65条第2項)。共有とは、一つの物を複数人で共同所有する形態をいいますので、各著作者が共同の成果である著作物を自由に利用できるとすると、共有者の利益を過度に害することになりかねません。この形態は、複数の人間が1台のパソコンを所有している状態と似ていますので、準共有と呼ばれます。従って、共同著作物を共同著作者以外の教職員も利用できるようにするためには、事前に共同著作者間で十分な協議が必要です。

4.eラーニング用の教材を作成するときに、著作権の取扱いで注意することはありますか?

 IT技術の進展にともない、パソコンやコンピュータネットワークなどを利用して教育を行うeラーニングが推進されています。従来の対面型講義や実習とeラーニングでは、著作権法上の取扱いが異なってくるため注意が必要です。対面講義で使用する教材のコピー、配付やパワーポイントによるスライド提示は、一定の範囲内であれば著作権者の許諾を得る必要はありません(著作権法第35条第1項など)。一方、eラーニングの場合は、教材のサーバーへの蓄積(送信可能化)や教材の不特定多数への配信(公衆送信)を伴うため、著作権者の許諾なしに著作物を利用することは認められていません。このため、たとえ他人の著作物を教育用途で利用する場合であっても、著作権者のその連絡先を調べ、許諾を得てから教材を作成する必要があります。なお、eラーニングの利用者が特定少数の場合や同一構内でのみ利用する場合は「送信可能化」や「公衆送信」には該当しません。

 

5.コンピュータ・プログラムを開発しましたが、学外機関へ有償で提供することはできすか?

 産学連携・知的財産本部では、研究用に開発したコンピュータ・プログラムを民間企業に有償で使用許諾した実績があります。研究の過程等で得られたプログラムを記録した電子記録媒体は、研究成果有体物として大学に帰属します(成果有体物取扱規程)。成果有体物を大学で一括して管理することにより、研究機関及び研究者が研究開発の場で自由に成果有体物を利用できるよう、円滑な提供と適切な取扱いを確保することが可能となります。また、産業利用を通じて社会に利益が還元されるよう、適切な契約を結んで民間企業へも提供することができます。なお、研究成果の広範な利活用を図るため、公的研究機関・研究者へ提供する場合には、一般的には、実費を上限(無償を含む)とすることが多いようです。アカデミアへ提供する場合も、使用許諾の範囲やプログラムの保守、研究成果の公表方法等について、あらかじめ覚書等を交わして、プログラム提供後のトラブルを未然に防ぐことが必要です。研究成果有体物を学外機関へ提供する場合には、知的財産担当教員にご相談ください。


6.コンピュータ・プログラムの権利はどのようにして保護できますか?

 著作権法では、プログラムを「電子計算機を機能させて一の結果を得ることができるようにこれに対する指令を組み合わせたものとして表現したものをいう」(同法第2条第1項10号の2)と定義しています。プログラムの著作物も他の著作物同様に、その表現に独自の創作性があれば著作権法により保護されます。ただし、コンピュータの機能を表現する上で不可避な表現やハードウエアに規制される表現などには創作性がないとされており、著作権法では保護されません。
一方、コンピュータ・プログラムは、一定の条件を具備すれば、特許法でも保護されますので、プログラムの内容が特許の対象とならないかを必ず検討することが必要です。一定の条件については、(A-31)をご参照ください。