【C】手続きに関すること

知的財産Q&A

1.教職員等が発明をしたときは、具体的にどうすればいいのですか?

 「発明届」を用意しておりますので、これに必要事項を記入の上、研究支援課に提出してください。その後発明委員会で審議の上、その発明について特許性、帰属等の評価を行い、対応いたします。なお、発明についての疑問や、提出書類の記載についての質問等がありましたら、知的財産担当教員に連絡いただければ対応します。

■発明の取扱いについて  ■発明届様式 ■発明届記入例 12


2.発明届を出すタイミングを教えてください。

 特許出願を行うためには、全くのアイディアではなく、ある程度実験データの裏づけが必要です。しかしながら、完璧を期すために出願を遅らせることも得策とはいえませんので、今までに無い新しいデータが得られ、学会発表を行うに足ると判断された時が発明届出のタイミングです。発明届出から実際の特許出願までにデータの追加や改良を行うことは可能ですし、特許出願明細書作成時の弁理士とのやり取りによって実験の内容も推敲され、同時に学会発表の内容も練り上げられる可能性もあります。発表直前あるいは期限直前に慌てて届出を行うというのではなく、学会発表と特許出願の両方を準備して互いに内容を高めあうことが理想と考えます。また、特許明細書の作成や学内の手続きには日数を要しますので、論文・学会発表等の遅くとも2ヶ月前までには届け出てください。


3. 届け出た発明はその後どうなりますか?

 発明届が提出されましたら、まず知的財産担当教員が技術内容についてヒアリングを行います。そのヒアリングの内容をもとに特許や学術文献の先行技術に関する調査を行い、特許性の予備的な判断を行います。その後、発明委員会で、当該発明を大学として承継し出願するかどうかの審議を行います。ここで承継・出願すると決定されると発明者から大学へ特許を受ける権利を譲渡していただき、出願作業に入ります。明細書等(特許の出願書類)の作成にあたって、発明者には特許事務所の弁理士とのヒアリングにご協力いただきます。発明委員会で、大学として承継・出願を行わないと決定された発明については発明者個人にお返しいたします。
発明の取り扱いについて


 

4. 発明委員会の決定の基準はどのようなものですか?

 発明委員会では、上記ヒアリング結果を参考にして発明者から提出された発明届の内容を検討します。審議事項は、発明が職務発明に該当するか否か、及び学校法人で活用するか否かの2点です。活用の要否の評価ポイントは、①産業上の利用性、②新規性、③進歩性、④公序良俗違反に該当しない、⑤発明の価値(大学の使命として重要な分野に属する基本発明等)、⑥技術移転の可能性、等です。


5. 発明が大学保有になったら自分の希望する発明の実施・移転先を自分で決められないのですか?

 発明者は、当該技術を最もよく知る者であり、技術の実施先や移転先についても心当たりがある場合が多いと考えます。従って知的財産本部では、特許を受ける権利が大学保有となっても、その実施先・移転先の決定には発明者の見解を尊重します。実施先や移転先について、心当たりや希望がある場合は、知的財産担当教員に遠慮なく申し出てください。


6. 先行技術はどのように調べればよいのですか?

 特許出願を行う上で、先行技術を調査することは非常に重要です。すでに特許出願されている技術を出願しても、特許要件の「新規性」や「進歩性」が欠如しているとみなされ、出願が無駄となるかです。先行技術調査の方法には、学術論文の調査だけでなく、特許等の出願状況についても調査することが必要です。費用をかけずに、手軽に検索できる手段の一つは、(独)工業所有権情報・研修館(INPIT)の特許情報プラットフォームです。特許情報プラットフォームのホームページにアクセスすると、特許情報プラットフォームを利用した基本的な検索方法を分かり易く記載したガイドブックや各種サービスの利用方法を解説したマニュアルがダウンロードできますので、ご利用ください。操作方法等で困ったときは、知的財産担当教員に相談してください。
※特許情報プラットフォームURL https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage


7.特許出願費用はどうなりますか?

 大学単独出願については、大学で費用を負担します。他方、共同出願にかかる費用は、本来は両者で負担しますが、共同出願人が民間企業の場合は、経費節減の面から、極力、相手企業にお願いしたいと考えています。(この場合、知的財産担当教員が対応いたします。)


8.発明相談から特許出願までの学内手続きの流れを教えて下さい。

 発明の相談を受けるとまずは担当教員がヒアリングを実施し、発明の内容について把握します。ヒアリングをもとに、発明者、発明の内容や効果、従来技術等を記載した発明届を提出してもらいます。発明届や関連資料等をもとに、JSTの特許調査員が先行技術調査を行い、特許性に係る評価書を作成します。発明委員会では、発明届の記載内容や先行技術調査結果をもとに、大学に特許を受ける権利を帰属することの要否について審議します。職務上の発明とみなされ、機関帰属の判定が下りた発明については、大学が出願費用を全額負担し、まずは国内について特許出願を行います。
 産学連携・知的財産本部では特許出願に必要な書類(明細書等)の作成を特許事務所に依頼しています。通常は、発明届の記載内容だけからでは、発明を十分かつ的確に理解することはできませんので、弁理士(特許出願の代理人)との面談の機会を設けます。明細書等の記載内容の不備、不明な点を相互で確認するため、複数回にわたる確認作業が入ります。出願のための明細書が完成するまでには、少なくとも1ヶ月程度が必要です。


9.出願までどのくらいの日数がかかりますか?

 出願依頼を受けてからの手続きとしては、通常、発明者からの発明届出書の提出、発明委員会での職務発明該当可否の認定、JSTでの先行文献調査、及び特許事務所への依頼と事務所での出願明細書の作成等が必要であり、少なくとも1ヶ月程度は要します。特許事務所の担当弁理士へは、面談による発明及び取得したい権利についての十分な説明が必要であり、また、強く、広い権利取得のための明細書作成にはできるだけ十分な日時を確保することが求められます。かかる出願を、余裕をもって戦略的に行う為にも、出願が予定される発明については、研究の初期の段階から知的財産担当教員へ相談してください。なお、先願主義の下、一刻を争う出願については、万難を排し緊急出願を行いますのであきらめずに相談ください。


10. 特許出願から特許権の登録までの流れを教えて下さい。

<学内手続きの流れ>

 本学が特許を受ける権利を承継した発明は、まずは国内で特許出願をします。一方、創薬などの発明は、世界規模の市場性が見込まれるため、外国出願も必要となります。このため、発明委員会では6ヶ月以内に国内出願したすべての案件について外国出願の要否を審議します。発明委員会で外国出願が必要と判定された発明は、外国出願費用の支援を受けるためJSTに支援申請をします。不採択の場合は、外国出願に係る多額の費用を大学が負担することには無理があるため出願を取り止めます。
 また、出願後も研究を継続することで、関連の発明が生まれたり、発明の具体的な実施データが追加された場合は、出願後一年以内に国内優先権主張出願をすることもありますので、関連するあらたな成果が生まれた場合は是非お知らせください。更に、出願した発明を特許登録するためには、別途、特許庁に審査請求をすることが必要です。特許庁が特許査定した出願のみが特許原簿に登録されます。すなわち、出願イコール登録ではありません。出願審査請求については、3年以内にその要否を発明委員会で審議します。技術移転先の有無が大きな判断材料となります。

 

<特許庁の手続きの流れ>
 特許出願を特許庁に行いますと、方式的な審査が行われた後、出願番号が付与されます。審査官による特許性の審査(一般に「実体審査」といわれます。)は、出願審査請求を出願から3年以内に行った場合にのみ行われ、出願審査請求をしない場合は、その出願は取り下げたものと見做されます。
 実体審査は、出願発明が新規性、進歩性を有するか、先願であるか等について行われ、通常、審査官は関連する先行公知文献を示した拒絶理由を出してきますので、拒絶理由を克服するために意見書や補正書提出し反論することになります。拒絶理由が解消されると審査官が特許査定を行い、特許登録料を納付することにより特許権が発生します。
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11.特許出願から特許の登録までどのくらいの費用がかかりますか?また特許を維持するためにいくら必要でしょうか?

 出願や権利維持の費用は、発明の内容や明細書の長さ等によって変わってきますが、標準的なケース(請求項5、明細書10枚、図面5枚)の費用は、特許事務所費用を含め概略は次のとおりです。なお、審査段階で特許庁への応答費用が別途発生することがあります。

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12.元の職場から引き続いて取り組んだ研究成果は、特許出願できますか?

 職務発明及び権利帰属が問題となります。例えば他大学から引き続いて取り組んでいる研究であって、特許出願の対象となる発明が、他大学にいるときに既に完成していた場合は、その他大学の職務発明に該当し、当該大学から出願することが求められます。一方、他大学から移行後に発明が完成した場合は、移行後の大学の職務発明に該当し、原則移行後の大学から出願することが求められます。勿論、職務発明が両大学に帰属する場合も考えられます。本学では、職務発明を、「現在または過去におけるその職務の範囲に属する発明等で、理事長から職務発明であると認定を受けた発明をいう。」と産業医科大学知的財産管理規程で定義しています。上記のような他大学からの継続研究の場合の発明については、微妙な問題でもありますので、まずは、知的財産担当教員にご相談ください。


13.大学院生の研究成果は大学から出願できますか?

 本学の産業医科大学知的財産管理規程では、「職務発明に係る知的財産権は、学校法人がその権利を承継する」と規定されています。また、「教職員等」とは、教職員、嘱託職員、研修医等の学校法人と雇用関係にある者とされています。したがって、大学院生が、教職員の指導や大学施設利用等の便宜を受けずに単独で発明したと認定できるケースにおいては、職務発明ではなく自由発明となり、大学は出願に関与しません。一方、大学院生や学部生の発明は、大学施設内において指導教官の下で行う研究活動の中でなされることが多く、また、研究は通常、グループで行われ、大学院生や学部生はその一部分に関与し、共同発明者の一人となることがあります。このような場合、大学院生や学部生は雇用関係にはありませんが、発明等の帰属等についての覚書等を交わして、本学で出願する場合もあります。